2022.3.11

フランスのインテリアデザインの祭典「メゾン・エ・オブジェ」が髙島屋に。プロダクトの名品から若手デザイナーの新たな発想までが集結

毎年パリで開催されるインテリアデザインの国際展示会「メゾン・エ・オブジェ」。この展示会を編集した展覧会「デザイン・ダイアローグ メゾン・エ・オブジェ・パリ展」が、日本橋髙島屋S.C.で開催中だ。展示の見どころをレポートする。

「デザイン・ダイアローグ メゾン・エ・オブジェ・パリ展」展示風景より
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 インテリアデザインのパリ・コレクションとも呼ばれる国際展示会「メゾン・エ・オブジェ」。毎年パリで開催されるこの展示会を編集した展覧会「デザイン・ダイアローグ メゾン・エ・オブジェ・パリ展」が、日本橋髙島屋S.C.で開催されている。その展示のハイライトをレポートしたい。

日本橋髙島屋S.C.エントランスの「デザイン・ダイアローグ メゾン・エ・オブジェ・パリ展」の展示

 展覧会は「デザイナー・オブ・ザイヤー」「ホワッツ・ニュー」「ライジング・タレント・アワード」の3部構成となっており、1部と3部をフランソワ・ルブラン・ディ・シシリアが、2部をエリザベス・ルリッシュがそれぞれ担当。現地フランスのキュレーターによるディレクションを見られるのも本展の魅力となっている。

 展覧会冒頭では、本展のイントロダクションとして、戦前より続く髙島屋とフランスの深い関係が紹介される。1941年、髙島屋では「ペリアン女史日本創作展覧会 2601年の住宅内部装備への一示唆」と題し、シャルロット・ペリアンの仕事を紹介。さらに1955年には「巴里 1955年 芸術総合への提案 ル・コルビュジエ、レジェ、ペリアン三人展」を開催しており、フランスのデザイナーを日本で広く紹介する窓口となってきた。会場では当時会場で展示されたペリアンのレフォロソファの復刻品や、ル・コルビュジエによるタペストリーの実物などを見ることができる。

展示風景より、「選擇 傳統 創造展」髙島屋会場、東京、1941 年 ©Adagp,Paris,2022

 第1部「デザイナー・オブ・ザイヤー」では、「メゾン・エ・オブジェ」が毎年開催してきた、その年にもっとも活躍したデザイナーを選出する「デザイナー・オブ・ザ・イヤー」に焦点を当てる。

展示風景より、ロナン&エルワン・ブルレックの作品 ©flos/©Altek

 会場では過去に同賞を受賞したデザイナー21名の作品を年代順に展示。インテリアのなかでは一番身近ながらも技術的には高いものを要求されるイスと、デザインにおける機能とテクノロジーの進歩を象徴する照明のふたつのアイテムに絞り、各デザイナーのクリエイションを紹介する。

展示風景より、nendo・佐藤オオキの作品 ©LASVIT/©LA MANUFACTURE

 パオラ・ナヴォーネやフィリップ・スタルク、ジャスパー・モリソンといった海外の著名デザイナーの作品から、日本人デザイナーの吉岡徳仁や佐藤オオキ、そして今年の受賞者であるフランクリン・アジにいたるまで、各時代の象徴的なデザイナーたちの作品を一堂に見ることができる貴重な機会となっている。

 第2部「ホワッツ・ニュー」では、キュレーターのエリザベス・ルリッシュが社会のトレンドを分析し、彼女の目を通して生活デザインを表現するためにセレクトされた200点あまりのプロダクトを展示する。

展示風景より、「瞑想的な自然」の展示

 今回は「エレメンツ・オブ・ネイチャー」をテーマに、新型コロナウイルスの時代における本質的な癒しや、非物質的なもの、自然への敬意などを主眼に置きながら、「本質的な自然」「瞑想的な自然」「彫刻的な自然」の3つのコンセプトで展示を構成した。

 「本質的な自然」の展示では、職人のローカルな技術や、木、陶器、織物といった素材にフォーカス。「瞑想的な自然」では水や空気、海洋などから着想を得た流動性や透明感を表現した。そして「彫刻的な自然」では自然や鉱物の有機的なフォルムに着想を得たプロダクトが並ぶ。

展示風景より、「彫刻的な自然」の展示

 なお、この第2部「ホワッツ・ニュー」の展示は、本国の「メゾン・エ・オブジェ」の開催が新型コロナウイルスの影響で延期されたため、本展が世界初披露となった。

 第3部「ライジング・タレント・アワード」は、「メゾン・エ・オブジェ」が毎年開催してきた、対象となる国で活躍する新進気鋭の逸材を選ぶアワードを紹介するもの。

 本章では選出された日本の若手デザイナーの作品と、フランスの新世代のデザイナーの作品が、互いに対話するように展示されている。ここではとくに、日本人若手デザイナーのクリエイションに注目したい。

展示風景より、「ライジング・タレント・アワード」の展示

 プロダクトデザイナーの岩元航大はスチールをつぶして溶接したイスや、PVCの塩ビ管を熱し吹きガラスのようにかたちをつくった器などを展示。素材を探求し、様々なアプローチを試みた結果としてのプロダクトが新鮮だ。

展示風景より、岩元航大の作品

 テキスタイルデザイナーの氷室友里は、ユーザーが自由にハサミをいれることで、絵柄が現れたり、造形が変化するクッションや絨毯を展示。テクスチャにユーザーの手が入ることで、新たな価値を生み出すデザインを提案する。

展示風景より、氷室友里の作品

 狩野佑真は日本の林業が置かれた状況へのリサーチを経て、伐採された木の質感を活かしたインテリアを提案。社会的な課題に対して、デザイナーとしていかにアプローチしたのか、思考の道程がうかがえる作品を展示した。

展示風景より、狩野佑真の作品

 ほかにも第3部「ライジング・タレント・アワード」では日仏の若き才能が生んだ作品をじっくりと見ることができ、刺激的な空間となっている。

 パリのデザインの祭典の熱気をそのまま日本橋髙島屋S.C.に持ち込み、デザインの歴史から新たな時代の創作までを見通せる展覧会。この機会にぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。