森アーツセンターギャラリーとしては初めてとなる書の展覧会、「書家 金澤翔子展 つきのひかり」が開幕した。会期は2022年1月8日まで。
金澤翔子は東京生まれの書家。5歳から母に師事し書を始め、20歳で初個展を開催。その後、東大寺や法隆寺など全国各地の神社仏閣で席上揮毫を行うとともに、国内のみならずニューヨーク、シンガポール、ロシア、台湾などでも個展を開催してきた。
そんな金澤にとって過去最大規模の個展となる本展は、「飛躍」「自立」「旅立ち」の3部で構成されている。
第1章「飛躍」では、10歳のときに書いた般若心経から、京都・建仁寺に奉納した《風神雷神》(2009)など、デビューからキャリアを重ねていく過程を見ることができる。
30歳のときに一人暮らしを始めた金澤。第2章「自立」は、環境の変化が作品に与えた影響にフォーカスしたものだ。またここでは、新作となる一文字シリーズから「山」「雨」「笑」など6作品も発表。小学生低学年で習う漢字それぞれが本来持つ意味が表現された作品群となっている。
なお、金澤が小学生時代に「SEKAI NO OWARI」のFukase、Nakajinと同級生だったことから、今回は両者のコラボレーション作品も展示されている。
終章となる「旅立ち」では、壁一面を覆う横幅15メートルの大作《心に光を 夜空に月を》(2021)が圧巻の存在感を放つ。本展のために書き下ろされた本作には、これまで自分を照らしてくれた人々への感謝が込められているという。またこの章にはアトリエコーナーもあり、会期中に書き下ろし作品が追加されていく。
開幕前日の12月11日、報道陣を前に席上揮毫を披露した金澤。母・泰子は次のようなコメントを寄せている。「翔子は小さい頃からお月様になりたいと言っていた。新月の時期も長かったが、二十歳に個展をした時から皆さんに励まされ、だんだん月になれたと思う。月は太陽に照らされて輝くように、翔子もひとりではいろんなことができないが、みんなに照らされている。翔子の書によって、ひとりでも苦しい人が救われてくれたら」。
初個展から15年を経て、今後の活動にも期待が高まる金澤翔子。その力強い作品群を体感してほしい。