新型コロナウイルスの影響で活動の機会が失われた芸術家に、発表や活躍の場を提供し、京都市内各地で文化芸術の魅力を発信する「京都まちじゅうアートプロジェクト」。その一事業として、オンラインで茶会を配信する「光冠茶会(ころなちゃかい)」が開催される。
このプロジェクトは、2月~3月の各日程で、10名の席主による多彩な茶会をオンラインで配信するもの。参加者には、事前に席主が選んだ茶や菓子を詰め合わせた茶箱が届き、京都らしい特色ある会場からのライブ配信を視聴しつつ、茶席を楽しむことができる。新型コロナウイルスの影響で芸術体験のあり方が大きく変化したいま、京都らしく現代的な手法で、豊かな芸術体験を世界中の人々と共有する場を準備した。
茶会の席主10名には、美術家も名を連ねる。英ゆうが席主として開催する茶会「帰家穏坐」(2月23日、受付終了)は、京都芸術センターで開催。庭師であり茶人である甘雨庵の植彦が煎茶の点前を披露する。参加者は、オンラインにて同時刻に点前を見ながら、それぞれが茶を淹れ、時間と体験を共有する。
美術家のヤノベケンジは「渡月茶会─2021年宇宙の旅」(3月20日)を開催。半東(補助役)に京都の老舗・有職菓子御調進所「老松」の太田達を迎え、ミクロとマクロの時空間を旅するドーム型の「小宇宙」で茶会を開催する。自給自足ができる移動型住居のモデルを「茶室」に見立て、宇宙開発の分野でも注目が集まる、食糧やエネルギー利用が可能な「藻類」を用いた特製菓子とともに、バーチャルな月旅行の体験を提供する。
陶芸家であり美術家の西條茜による「胎内茶会」(3月21日) の舞台となるのは、京都市営地下鉄醍醐車庫だ。茶人の中山福太朗をコラボレーターに迎え、暗闇のなかで響く茶釜の音と、西條の作品を用いたサウンドパフォーマンスが重なる。自宅の部屋を暗くして参加することで、胎内へと回帰するような体験が可能となる。
現代美術家・宮永愛子が席主を務める「Voyage」(3月下旬予定)は、「観測」にちなんだ菓子と茶が小さな宇宙として届けられる、宇宙を感じられる茶会だ。「オンラインで時空を超える」という発想から生まれたこの茶会は、参加者がそれぞれのタイミングで旅に出ることができる。
ほかにも、歌舞伎俳優の中村壱太郎による「壱太郎の舞茶会」(2月28日)、劇作家・演出家の神里雄大による「オンライン・マテ茶会」(3月6日、7日)、ダンサー・振付家の康本雅子による「How to 溶けるレロ」(3月12日)、料理人、吉田裕子による「中国茶、台湾茶〜時間をたのしむ」(3月13日)、音楽学者の岡田暁生による「あなたのメロディが名曲に」(3月24日) 、批評家・黒嵜想による「国際人類観測年」(3月下旬予定)を開催。
茶会という場にオンラインを通じて参加することで、これまでにはないかたちで文化芸術に触れられる「光冠茶会(ころなちゃかい)」。この新しい時代の茶席に、招かれてみてはいかがだろうか。