京都造形芸術大学教授でアーティストの椿昇がディレクションを担当し、アーティストが企画から出品までを行うという独自のシステムをとるアートフェア「ARTISTS’ FAIR KYOTO」。今年3回目を迎えるはずだったこのフェアが、異例の対応でスタートした。
本来、同フェアは京都府京都文化博物館 別館と京都新聞ビルをメイン会場に、過去最多となる63組の作家が参加する予定だった。
メイン会場はすでに設営も終わっており、あとは来場者を待つばかりという状態。しかしながら、主催者は新型コロナウイルスの感染症拡大の防止のため、参加者および関係者の健康・安全面を第一に考慮し、メイン会場の開催中止を決定した。これまで同フェアでは初回3092人、前回5512人という規模の来場者を記録していた。
ARTISTS’ FAIR KYOTOはこのメイン会場以外に、サテライトイベントとして「ARTISTS’ FAIR KYOTO 2020:BLOWBALL」も行なっており、こちらは一部会場をのぞき予定通りの開催となる。
今回、BLOWBALLには会場としてAIR賀茂なす、BnA Alter Museum、Gallery PARC、GOOD NATURE STATION、庵町家ステイ 筋屋町町家、KYOTO ART HOSTEL kumagusuku、スプリングバレーブルワリー京都 洋館、ワコールスタディホール京都 ギャラリーが参加。それぞれで異なる展覧会が行われている(会期も異なる)。
例えば、アートホテルとして2019年にオープンした「BnA Alter Museum」では、館内1階と2階の展示スペースを使い、「スーパーマーケット “アルター”市場」を開催。これは、関西を拠点とする3人の若手ディレクター(黒田純平、筒井一隆、渡邊賢太郎)がセレクションした作家たちを紹介するアートフェアだ。星拳五、溝渕珠能など、関西にゆかりがある若手作家計10名の多様な作品が並ぶ。
「展覧会の中に宿泊し、美術を“体験”として味わうための宿泊型のアートスペース」をコンセプトに、2015年にオープンした「KYOTO ART HOSTEL kumagusuku」。ここでは、神奈川を拠点に活動する高橋美衣の個展「知らないかたち」を開催。高橋が自由に思い描く様々なかたちが、抽象的な立体作品として点在する。吹き付けによる独特の色彩にも注目だ。
京町家の一棟貸し宿泊施設「庵町家ステイ 筋屋町町家」では、館内すべてを使い香月美菜の個展「From one stroke 2」を開催。青のみを使った絵画で知られる香月は、今回の会場にあわせた巨大な平面作品を制作。233色もの異なる青をつくり、9時間以上をかけてそれらをキャンバスに絞り置いた大作は、本展の見どころのひとつ。座って鑑賞することで、複雑な青に没入するような体験ができるだろう。
昨年オープンしたばかりの「AIR賀茂なす」では、気鋭の日本画家として注目を集める品川亮の個展「GOLD, WHITE, AND BLACK」を開催。今回、すべて新作で展示を構成した品川は、伝統的な材料である金箔や岩の絵具、あるいは墨を使いながら、日本画のさらなるアップデートを試みる。
メイン会場は中止となってしまった今回のARTISTS’ FAIR KYOTO 2020だが、こうしたサテライトイベントで若手作家たちと出会うのも楽しみ方のひとつだ。