イヴ・クライン、李禹煥、丁乙の共演。上海当代芸術博物館で「The Challenging Souls」が開催中

イヴ・クライン、李禹煥(リ・ウーファン)、丁乙(ディン・イ)といった、西洋と東洋の異なる文化的背景を持つ3人のアーティストの作品が一堂に会する展覧会「The Challenging Souls: Yves Klein, Lee Ufan, Ding Yi」が、4月28日に上海当代芸術博物館で開幕した。その様子をレポートでお届けする。

会場風景より、手前がイヴ・クライン《Dry Blue Pigment》(1957[2019再制作])

 1950〜60年代のフランスの前衛美術を代表するイヴ・クライン(1928〜1962)、60年代日本の「もの派」、70年代韓国の「単色画」の中心人物である、36年生まれの李禹煥(リ・ウーファン)、そして62年に生まれ、80年代からおびただしい数の「十字架」からなる抽象画を制作してきた生まれの丁乙(ディン・イ)。その3名による展覧会「The Challenging Souls: Yves Klein, Lee Ufan, Ding Yi」が、4月28日に上海当代芸術博物館で開幕した。

会場風景
李禹煥。後ろに見えるのは李の絵画作品《対話》(2019)

 会場でもある上海当代芸術博物館は、現代美術を専門とする、中国本土初の国営美術館として2012年に設立。パワー・ステーション・オブ・アート(PSA)の名でも知られ、上海万博の跡地にあった元発電所をリノベーションした大きなスケールの建築が特徴。

​ そしてクラインと李を中国で初めて大規模に紹介する機会でもある本展は、絵画やインスタレーション、資料など100点以上の作品が紹介されるという貴重なものだ。

会場風景

 クラインの作品や文書、写真、映画、資料など、豊富な使用を所蔵するイヴ・クライン・アーカイブの多大な協力によって、作家の活動を包括的に紹介する本展。

 柔道とスピリチュアルティを探求したアーティスト活動以前から、金色、ピンク、青などを単色で用いたモノクロームの絵画まで、クラインが34歳で生涯を終えるまでの軌跡をじっくりとたどることができる。

会場風景より、イヴ・クラインの作品

 クラインの生誕90年となる今年、フランスの高級塗料会社「Ressource(ルスルス)」が「Yves Klein®」塗料コレクションを発表。クラインの代名詞でもある青色「インターナショナル・クライン・ブルー」(IKB)が販売されたことが話題になったが、本展ではそのIKBを堪能することも可能だ。

展示風景より、イヴ・クライン《Dry Blue Pigment》(1957[2019再制作])
インターナショナル・クライン・ブルーを利用した、李禹煥《Relatum—Infinity Road》(2019)
会場風景より、李禹煥《対話》(2019)

 そして60年代日本の「もの派」、その影響を受けた韓国「単色画」の代表作家としても名高い李。本展では、李の最新作、近作に加え、IKBを使用したコラボレーション展示も見どころだろう。李は「中国でこれほど大規模に自分の作品を発表する機会があるとは思いませんでした。また、今回は自分にとって中国で3度目の展覧会ですが、毎回みなさんの反応や感触がまったく異なるのが印象的。今回は、“東洋”“西洋”といった区分は忘れ、三者のコラボレーションを楽しんでもらえたら」と話す。

会場風景より、丁乙《十示2018-B3》(2018) 
会場風景より、丁乙の作品群

 そして、中国の現代抽象画の先駆者である丁の作品にも注目したい。オフセットカラー印刷で使用されるマーキングから着想を得たという「十字架」のかたちがキャンバスを埋め尽くす丁の作品は、大型の絵画、版画作品などからなる。そして80年代の初期作から近作までの移り変わりを通して、アーティストの背後にある中国や上海の劇的な変遷も垣間見ることのできるような作品群になっている。

 オープニングにて「作品は対話を促すプラットフォームであり、アバンギャルドはノスタルジーではなく更新されていくもの。展覧会タイトルの“The Challenging Souls(挑戦する魂)”は、三者の作品に共通する姿勢を表してます」と語った本展キュレーターの龚彦(ゴン・ヤン)と李龍雨(ヨングウ・リー)。本展は、各自の「The Challenging Souls」の共鳴を見せるように、三者の作品がともに配置される空間が多いのも特色だ。

会場風景
オープニングで行われた李禹煥によるパフォーマンスの様子

 各作家の作品はもちろん、これほど規模でのコラボレーションを見ることは世界でも貴重と言える本展。展覧会は7月28日まで行われているため、日本からは飛行機で約3時間ほどの上海まで足を運んでみてはいかがだろうか。

編集部

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