アートを介してコミュニティを育むソーシャルデザインプロジェクト。アート・コミュニケータ「とびラー」になろう!

東京都美術館と東京藝術大学が協働し、東京・上野公園を拠点に活動する「とびらプロジェクト」の、次年度の募集が1月より始まる。その概要とプログラムの一部を紹介。

文=米津いつか

アート・コミュニケータ「とびラー」集合写真

 東京都美術館が2012年のリニューアルをきっかけに東京藝術大学と連携してスタートさせた「とびらプロジェクト」。美術館を拠点にアートを通して人々のなかに新しい価値を育むこのソーシャルデザインプロジェクトでは、毎年一般公募で約40名集まるアート・コミュニケータ「とびラー」の存在が核となる。

 とびラーとは、東京都美術館の略称「都美(とび)」と、「新しい扉(とびら)を開く」という意味が含まれた愛称で、会社員や学生、専業主婦、退職後の方など、18歳以上の様々な人たちで構成されている。任期は3年間。ボランタリーだが、サポーターでなく、プレイヤーとして活動を展開しているのが特徴だ。

 とびラーは、「基礎講座」「実践講座」の2段階の講座を受ける。全6回の基礎講座では、働き方研究家の西村佳哲を講師に迎え「きく力」について考えたり、実践講座では、「鑑賞実践講座」「アクセス実践講座」「建築実践講座」の3つから1つ以上を選択し、学んだりできる。

 講座のほかにも、とびラーが自発的に開催する実験室のような「とびラボ」がある。自分のアイデアに共感してくれたとびラーを3人以上集め(「この指とまれ式」)、それぞれにできることを組み合わせて新しいプロジェクトの検討と発信を行う(「そこにいる人が全て式」)。「とびラボ」は、1年を通して活発に行われている。

 こうして培われるコミュニケーションの“質”が、どのように社会を“ひらく”扉となるのか。2018年10月には、とびらプロジェクトの全貌を記した書籍『美術館と大学と市民がつくるソーシャルデザインプロジェクト』(青幻舎)も刊行された。現在、来年度からのとびラーを募集中。人と作品、人と人、人と場所をつなぐアート・コミュニケータへの第一歩を踏み出してみては?

 

プログラムの様子を紹介!

 スペシャル・ マンデーでの「ゴッホとゴーギャン」展(東京都美術館、2016)の鑑賞の様子

 スペシャル・ マンデー

休室日となる月曜に特別に展示室を開ける、学校単位で訪れる子供たちのためのプログラム。とびラーが「鑑賞実践講座」で学んだことなどを生かして伴走し、子供たちは対話を通して鑑賞を深めていく。

建築ツアーの様子

建築ツアー

モダニズム建築の旗手、前川國男が設計した東京都美術館の建物をとびラーの案内で散策する。「建築実践講座」の実践の場でもあるこのツアーは年6回、奇数月の第3土曜日に開催。とびラーの個性が発揮される人気ツアー。

アート筆談de対話鑑賞でのワークショップ風景

とびラボ:アート筆談de対話鑑賞

「ゴッホとゴーギャン展」の際に実施された鑑賞ワークショップ。耳の聞こえない人と聞こえる人が一緒に展覧会を鑑賞した後、様々な画材を使って文字や色、形を自由に描く「アート筆談」で対話した。

とびラー・瀬戸口裕子のコメント
トライアルの反省点をふまえ何度もミーティングを重ねてきた内容を、いくつも実現できました。

作品イメージ

とびラボ:オリジナル・モンスターをつくろう!

東京都美術館での「ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル『バベルの塔』展」に関連し実施。参加者は絵の中に描かれたモンスターを観察し、様々な素材でオリジナル・モンスターを制作。

とびラー・山田裕子のコメント
アートやひとを通じて、楽しみながら、様々な驚きや発見が得られる場所づくりを目指しています。

編集部

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