ART TAIPEIの強みは、30年以上にわたる台湾アートマーケットの開拓によって、忠実なコレクター層を築き上げた点にある。また、同画廊協会が台中と台南で開催するアートフェア「ART TAICHUNG」「ART TAINAN」も、それぞれの地域でコレクター層を育てており、これがART TAIPEIにもより多くの顧客をもたらしている。
今年新たに就任した中華民国画廊協会の理事長・陳菁螢(クラウディア・チェン)は「美術手帖」の取材に対し、「今後は新たな目標として、より多くの若い観客やアートパトロンの育成を目指す」と語っている。
今年のART TAIPEIは「30+1」というスローガンを掲げており、鑑賞者一人ひとりが友人などを一人連れて来場し、アートを薦めることで、台湾のアートシーンのさらなる発展を図ろうとしている。今後の目標について、陳理事長はこう付け加えている。「より多くの国際的なギャラリーの参加を促し、より多様な議題を提起することで、台湾の鑑賞者やコレクターが芸術鑑賞の経験をより豊かにし、芸術市場の成熟を進めたい」。
今年のフェアでは、台湾の先住民アートにフォーカスした特別展が第5回目を迎え、エタン・パヴァルン、林安琪(チワス・タホス)、ルビー・スワナ、マレー・マカカズワンの4人の先住民アーティストが、文化やジェンダーアイデンティティ、霊性と自然神性とのつながり、社会や生態系への配慮をテーマにした作品を発表している。
台湾の文化部が推進する「MIT新人推薦特区」も第17回目を迎え、8組の若手アーティストによる作品が展示されている。このセクションはこれまでに136組のアーティストの作品を紹介してきたという。また、今年6月に台北で設立されたチェコの文化機関「チェコセンター」も、初めて同フェアに出展し、「Variety of Stories」をテーマに、ヤン・カドレツ、マルケタ・ヴァンコヴァ、テレザ・シュテティノヴァなどのチェコ現代アーティストの作品を紹介している。
さらに、今年のフェアでは、世界各国から美術館長やキュレーター、アートパトロンを招き、キュレーション実践やプライベートミュージアムの役割、アートの都市への影響力などをテーマにするトークイベントも開催される。登壇者には、シャルジャ・ビエンナーレのディレクター、アリア・スワスティカやテート美術館のキュレーター、アルヴィン・リー、デルフィナ・ファウンデーションの創設者アーロン・セザールなどが名を連ねている。
今年のART TAIPEIは、アジア最大のLGBTQ+パレードである「Taiwan Pride」とも初めて同時開催されている。両イベントは今年コラボレーションをしていないが、陳理事長は来年に向けてより多様な連携の可能性を探り、さらに多くの鑑賞者をフェア会場に引き込むことを期待している。また、来年11月には台北市立美術館で第14回台北ビエンナーレが開催され、台北アートウィークもさらに盛り上がりそうだ。今後の展開に期待が高まる。
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