2022.6.13

NEW AUCTIONが第2回目のオークションを開催。最高落札額はロッカクアヤコの7300万円

東京・原宿のThe Icebergを会場に、NEW AUCTIONの「NEW002」セールが6月11日に開催された。そのハイライトをレポートする。

文=塚田萌菜美

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 6月11日に、NEW AUCTIONは東京・原宿のThe Icebergで「NEW002」セールを開催した。国内オークションを賑わす人気作品、エディション作品や写真作品のみならず、日本では目にすることの少ない海外著名作家による作品などが出品された。

下見会より、左からシンディ・シャーマン《Untitled #122》(1983)、ロバート・メイプルソープ《シンディ・シャーマン》(1983)

 スタートはシンディ・シャーマンによる《Untitled #122》(1983)。女性写真家が自らを被写体に、女性に対する視線の脱フェティシズム化を図った作品である。相場よりもエスティメイト設定がやや高めに設定されていたが、上限1.8倍の1450万円で落札。写真作品の販売が苦戦しがちな日本で、近年稀に見る高額落札を叩き出し、冒頭から会場を騒然とさせた。

 続いてはロバート・メイプルソープが撮影した《シンディ・シャーマン》(1983)。こちらは予想落札価格範囲内の105万円で落札。

オークション会場より、ジョナス・ウッド《M.G. Orchid》(2009)の落札の様子

 ジョナス・ウッドの《M.G. Orchid》(2009)は、日本でオリジナル作品の出品が珍しいためか、電話同士による激しい競り合いの結果、エスティメイト上限を超えた1800万円で落札。

 いっぽうで、日本初登場となったウェイン・ティーボーのキャンバス作品《Study for Freeway》(1979)は、作家の海外での知名度と落札金額の高さとは裏腹に、書面入札による1ビッドの3000万円での落札となった。

 マイケル・ケーガンの《Untitled》(2018)は、今年の3月にサザビーズで出品された類似作品とほぼ同水準の460万円で落札されている。

下見会より、中央左からロッカクアヤコ《Untitled》(2016)、KYNE《Untitled》(2019)

 国内作家勢は、歴代2番目の大型キャンバスの出品となったKYNEの《Untitled》(2019)が、オンライン同士の競りで1950万円と、歴代2番目の高額落札を叩き出した。

 続くロッカクアヤコは先月のクリスティーズ香港のイブニングセールで大型作品が1億円を超え、また先月SBIで一回り小さい作品が出品されたことでも記憶に新しい。今回の《Untitled》(2016)は、電話と書面の一騎討ちの結果、7300万円での落札と、このセールでの最高金額をマークしたが、春季のオークションシーズンで他社が叩き出した相場には及ばず、落札者にとっては比較的お買い得な結果に終わった。

オークション会場より、井田幸昌《End of Today, Face》(2017)の落札の様子

 2ロットにわたって出品された井田幸昌の《End of Today, Face》(2017)は、ともに2020年にSBIで出品履歴がある作品であった。赤色が基調のロット063については、当時の倍以上である125万円での落札となり、井田の人気と価格の上昇ぶりが如実に反映された結果となった。

梅沢和木 彼方クロニクル此方 2015

 梅沢和木の《彼方クロニクル此方》(2015)は、梅沢にとってオークション出品で最大級、曾我蕭白の《富士三保図屏風》を下敷きに東日本大震災での惨禍を描写した幅6.3メートルもの襖絵。大作がゆえに入札に対するハードルが上がることを見越してか、通常の相場に対して半分以下のエスティメイト設定であったが、オンライン同士で競り合い、750万円で落札。

会田誠 おにぎり仮面 2002

 会田誠の《おにぎり仮面》(2002)は、会田の彫刻などで登場する、代表的なキャラクターを椅子に描いた作品。書面入札が逃げ切り、120万で落札。

高松次郎 Shadow No.1415 1997

 戦後作品についても見ていく。高松次郎の《Shadow No.1415》(1997)は1964年から取り組み始めた代表的な影の絵画のうち、後年に改めて向き合った作品群のひとつ。電話とオンラインが競り、上限超えの670万円で電話が逃げ切った。

 国立新美術館で大規模な展覧会を控える李禹煥の《点より・線より》(1977)は、エディション揃い、かつポートフォリオケースつきの完品という希少さからか、会場同士で激しく競り合い1800万円での落札。

オークション会場より、オノサトトシノブ《Circle》(1967)の落札の様子

 この日のオークションで、一番鮮烈な競りを見せたのは、オノサトトシノブの《Circle》(1967)。国内現代美術館の常設展などでしばしば特集される抽象作家の黄金時代の作品が、海外の地方オークションを経て日本のオークションに凱旋した形となる。オンラインと電話ビッドの一騎討ちで、当初から電話ビッドが競り幅を超えて金額を上げ、オンラインをふるい落としにかかること6回、上限超え280万円での落札となった。

 予想外の競りを見せた作品もあった。フューチュラ2000の《Untitled》は、裏面に為書きがあるため、エスティメイトは通常作品の4分の1に設定されていたが、会場とオンラインで競り合い、上限2倍以上の73万円での落札となった。

 また、田中敦子の夫として知られる金山明の《Work》(1952-54)は2021年にクリスティーズでの出品履歴がある作品だが、87万円での落札と、以前を大幅に上回るラインまで書面とオンラインで競り、書面が逃げ切る展開となった。

オークション会場より、山口幸士《Untitled》(2019)の落札の様子

 今回、オークション初登場の作家は4組。デビューに相応しく、ほぼ全員がプライマリーの価格よりも高めの水準での落札となった。中でも、先日「小さな光」展で注目を集めた山口幸士の《Untitled》(2019)は、オンライン同士が競り合い、上限の4倍以上の73万円で落札。

 セール全体を通して振り返ると、国内のコレクターに馴染み深いアーティストの作品とコアなファンがいる作品については、相場前後もしくは一部それ以上の結果を出したと言えるだろう。他方で馴染みの薄い作品などは、様相が少々異なっていた。日本では若手スター勢の影に隠れがちだが良質な作品や海外では密かに人気の作家など、幅広く取り揃えて紹介する意図がラインナップからは読み取れたが、現実は未だに注目が集まりかねているように感じられた。他社と比較するとぐっと開催回数と出品点数が絞られたオークションの、今後の動向に注目したい。

 落札価格に取引手数料15パーセントを加えたオークションの最終的な取引総額は4億4118万250円、落札率は93.7パーセントとなった。なお、本レポートでお伝えした落札価格は、取引手数料15パーセントを加える前の数字となっている。