難民問題を直視する。アイ・ウェイウェイがヨコハマトリエンナーレ2017で大作を発表

8月4日から「ヨコハマトリエンナーレ2017」が開催されるのに先立ち、参加アーティストの一人であるアイ・ウェイウェイによる2つの大作が一足早くお目見えした。

アイ・ウェイウェイのインスタレーション ©Ai WeiWei Studio

 一見、横浜美術館のファサードが鮮やかに彩られたかのように見える。しかし、近くに寄って見たとき、その正体に少なからぬ衝撃を受けるだろう。アイ・ウェイウェイが今回発表するのは、ともに日本初公開の《安全な通行》(2016)と《Reframe》(2016)、そして館内に展示される《河の蟹(協調)》(2011)の3作品。

 美術館のエントランスに位置する二つの巨大な柱を覆っているのは、中東や北アフリカから地中海を渡り、レスボス島に漂着した難民たちが実際に着用していた、およそ800のライフジャケットで構成された《安全な通行》だ。生死を賭けた人々が着用していたライフジャケットの群れは《安全な通行》というタイトルのもと、トリエンナーレへの(避けては通れない)入口となる。

アイ・ウェイウェイ 安全な通行 2016 ©Ai WeiWei Studio
《安全な通行》(2016)の部分 ©Ai WeiWei Studio

 また、美術館の外壁に並ぶ《Reframe》は、14艇のオレンジの救命ボートからなる。2016年にイタリアで初めて公開された同作は、救命ボートを窓枠に見立てたもので、タイトルにあるように、人命を救うための救命ボートで新たな枠組みをつくることを意味している。

 先日公開されたビデオメッセージで「私たちは、すべての境界をなくし、同じ価値を共有し、自分以外の人々の苦悩や悲劇をはじめとする様々な苦難に関わるべき」という自身の作品に込めた思いを語ったアイ。その言葉の通り、ニュースで知りながらも、日本ではなかなか実感できない難民問題の現実性が強く突きつけられる作品だと言えるだろう。

 アイ・ウェイウェイを含む38組と1プロジェクトが参加する「ヨコハマトリエンナーレ2017」は、果たしてどのように世界のアクチュアルな問題を提示するだろうか。

編集部

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