2017.4.18

ヨコハマトリエンナーレ2017にアイ・ウェイウェイやオラファー・エリアソンらの参加が決定

2001年に始まり、今年で6回目を迎える「ヨコハマトリエンナーレ」の参加アーティスト第1弾が明らかになった。「島と星座とガラパゴス」と題された今回は、アイ・ウェイウェイやオラファー・エリアソン、柳幸典らが参加する。

(左から)記者会見に登壇した逢坂恵理子、柏木智雄、三木あき子、小沢剛、宇治野宗輝
前へ
次へ

横浜らしさを意識したトリエンナーレ

 アーティストのスプツニ子!や、リクリット・ティラバーニャ、美術史家・高階秀爾らを「構想会議」メンバーとして迎え、横浜美術館館長の逢坂恵理子、同館副館長・柏木智雄、ベネッセアートサイト直島インターナショナルアーティスティックディレクター・三木あき子の3名が「ディレクターズ」として、キュレーションなど運営の全般に携わる「ヨコハマトリエンナーレ2017 島と星座とガラパゴス」は、「横浜の歴史や横浜らしさ」を意識し、世界の「孤立」や「接続性」の状況について様々な角度から考察するもの。

 4月18日に行われた記者会見で逢坂館長は「2017年は大政奉還、パリ万博日本正式参加から150年経ちました」と歴史的な時間軸を参照しつつ、「異文化や新しい交流を受け入れてきた横浜ならではの趣向を凝らしています。歴史を踏まえながら、バラバラなものをつないでいくということを想定しつつ、さまざまな取り組みを考えました。アートの持っている想像力や可能性を考えていきたい」とその方向性について語った。

逢坂恵理子館長

 また、柏木は横浜が開港の地であることを踏まえ、テーマ設定についてこう述べる。「横浜は近代化を牽引してきた。テーマ設定にあたっては、150年前の日本の状況、孤立から接続へ移り変わった状況を念頭に置いている。改めて横浜という土地から、いま現在、世界のアクチュアルな問題を、アートを通して共有し、考え、議論する機会となることを強く意識しています」。

国内外40組のアーティスト

 今回、明らかにされた参加アーティストは総数約40組のうち、アイ・ウェイウェイ、サム・デュラント、オラファー・エリアソン、クリスチャン・ヤンコフスキー、畠山直哉、ジェニー・ホルツァー、川久保ジョイ、小沢剛、宇治野宗輝、柳幸典ら26組と、2015年3月11日より福島県帰還困難区域で展開されている展覧会「Don't Follow the Wind」。多くの作家が複数の作品を出品し、個展の集合体のような構成になるという。

参加作家について説明する三木あき子

 近年、ヨーロッパでの難民問題を積極的に取り上げているアイ・ウェイウェイは、ギリシャ・レスボス島にたどり着いた難民が実際に着用していたライフジャケットを用いた《安全な通行》(2016)など複数の作品を展示するほか、クリスチャン・ヤンコフスキーは日本でほぼ初めての本格的な展示として、ワルシャワの社会主義時代の公共彫刻をモチーフにした《重量級の歴史(ルトヴィック・ワリンスキー)》(2016)を展示。

アイ・ウェイウェイ(艾未未) 安全な通行 2016 © Ai Weiwei Studio
クリスチャン・ヤンコフスキー  重量級の歴史(ルドヴィック・ワリンスキー) 2013 Photo by Szymon Rogynski Courtesy the artist, Lisson Gallery

 会見に登壇した小沢剛は、歴史上の人物にスポットを当ててストーリーを仕立てる作品「帰ってきた」シリーズの第4弾を発表。新品は8枚の巨大なペインティングと映像で構成され、インド・カルカッタでリサーチをしたとある人物の足跡をたどりながら、再解釈するという。

会見に登壇した小沢剛

 また、既製品を組み合わせ、音や光を伴う作品を制作する宇治野宗輝は3つの作品を発表。美術品輸送に使われる木箱(クレート)を建築物に見立てた「Playwood City」シリーズの最大となる新作を展示するほか、映像作品、カタカナを使った外来語をテーマにした平面作品を出品する。

他の国際展との差別化

 「ヨコハマトリエンナーレ2017」の40組という参加作家数は、近年の国際展と比較すると、決して多いものではない。この理由について逢坂は次のように語る。「2001年にヨコハマトリエンナーレが始まったときは、このように多くの国際展が開催されるとは誰も思わなかったのではないでしょうか。作品と向き合い、対話するという経験は、今の国際展では難しくなってきている。あえて作家数を絞り、複数点を見せるという方向性を取りました」。

 また三木は「国内で多くの国際展があるなかで、横浜美術館という場所を考えたとき、比較的作品と向き合える環境にあるのではないかと思います。目新しさを第一に考えず、作品の質と鑑賞体験の深度にこだわった。また、これ以上参加作家を増やすと、作家と話をしていくことが難しくなるので40名程度となった」と話す。

パオラ・ピヴィ I and I(芸術のために立ち上がらねば) 2014 Photo by Guillaume Ziccarelli Courtesy of the Artist & Perrotin

 ヴェネチア・ビエンナーレやカッセルでのドクメンタ、ミュンスター彫刻プロジェクトなど、国際的知名度の高い国際展が開催される今年。そのなかで開催される「ヨコハマトリエンナーレ2017」はどのようなスタンスなのか。逢坂は「多くの国際展があるなか、差別化は難しい」としながらも、「長い歴史のある国際展は開催地との関係が無縁ではない。都市型であっても、街の歴史やリソースが、今まで見たことがなかったものに対しての窓を開けてくれる。街の魅力は国際展とつながっていると思います。(横浜の)何が魅力で、何が継続すべきものなのか、何を学ぶことができるのかを含めて、テーマと内容を突き進めてきました」と言う。

 これまで以上に横浜という土地、横浜らしさを意識した「ヨコハマトリエンナーレ」がどのような反響を生むのか、注目したい。