続いて登壇した上杉は、再生案の柱として「民間が全額自己資金で耐震改修・保存を行い、宿泊施設等として利活用する」こと、「土地を香川県から購入し、建物を無償譲渡または低額譲渡で取得する」ことの2点を挙げた。
上杉は「たんに『保存』するだけでは、維持管理費がかさみ、赤字が常態化する可能性が高い」と指摘。そのため、建物の構造的・意匠的価値を残しつつ、観光や宿泊といった用途によって収益を生み出す『再生』が不可欠であるとの認識を示した。

また、再生にかかる耐震改修費については、2014年当時の見積もりである18億円から、現在では約半額〜3分の1程度に圧縮できるとの試算を紹介。これは、民間建築としての基準適用による耐震性能の緩和や、3次元構造解析技術の進展による補強最適化の可能性によるものであるという。
再生委員会が検討する活用案は主に2つある。ひとつ目は、宿泊機能と大規模なブックラウンジを組み合わせた「ブックラウンジホテル」案。2階以下に宿泊施設、3階以上の空間には書籍に囲まれたラウンジやアートスペースを設ける計画である。

2つ目は、一棟全体を宿泊用に転用する「一棟貸しホテル」案。中庭に光が差し込むよう屋根の一部を開口するなど、建築的にも新たな魅力を創出する方針が示された。いずれの案においても、年間約1億円の営業利益が見込まれており、民間事業としても継続性があると説明された。
また、初期投資額は30〜60億円、年間経済波及効果は3〜7億円と試算。短期的な収益性のみならず、建築文化資産としての香川県のブランド価値向上という長期的視点の重要性も強調された。



















