なぜ、いま「先住民の現代アート」なのか?
「先住民の現代アート」特集には、巻頭にジェフリー・ギブソン、ジョーン・クイック=トゥ=シー・スミス、レイヴェン・チャコン、ニコラス・ガラニン、マユンキキのインタビューを掲載。また「先住民の現代アーティスト」では、ケント・モンクマン、リチャード・ベル、レベッカ・ベルモア、ブルック・アンドリュー、ブレット・グラハム、マタアホ・コレクティブなど、20名を超える作家を紹介している。
さらに、「『先住民の現代アート』を知るための基礎知識」や「先住民のアートと文化に関する世界の施設・団体」、アメリカ先住民芸術教育機関(IAIA)で教鞭を執るマリオ・A・カロ、アイヌ文化研究者の北原モコットゥナㇱという各氏の論考、コラム等も掲載されている。
本特集で監修を務めた原田真千子の巻頭言を引用して紹介する。
「今回のヴェネチア・ビエンナーレならびに近年の国際的なアートシーンにおける先住民のアーティストの存在感を、私を含む非先住民の人々は、一過性のトレンドだと思ってはならない。先住民たちが何十年にもわたって闘い続けている直接的な運動に始まり、アートの表現と実践を通して行動の先陣を切ってきた、数多の先住民のアーティストとキュレーターたちの持続的な努力と築き上げたネットワークによって、点が線となり、線が重なり、先住民たちを疎外し、周縁化してきたマジョリティが無視できないステージへと、その扉を開いてきたのだ」。
(『美術手帖』2024年7月号「先住民の現代アート」特集 巻頭言より一部抜粋)
第2特集では、第60回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館の毛利悠子「Compose」展をリポート。動きと音を伴う音響彫刻的な作品で国内外から高く評価される毛利、そして毛利からの指名によりイ・スッキョンが日本館初の外国人キュレーターを務めた。同地で開催された「Compose」展の意図に飯田真美がせまる。
アーティスト・インタビューでは、様々な土地で人と関わりながら、人間の想像力や物語創造を探求するエレナ・トゥタッチコワを取り上げる。国立西洋美術館での展覧会へ参加した作家に、世界の道づくりとしてとらえている「歩行」や、多様なメディアによる表現方法、そしてその根底に流れる思考について、崔敬華が話を聞いた。