解体された中銀カプセルタワービルのカプセル。サンフランシスコ近代美術館が収蔵へ

黒川紀章建築の名作として知られていたものの、2022年に解体された銀座の「中銀カプセルタワービル」。そのカプセルの1基をサンフランシスコ近代美術館が取得した。

中銀カプセルタワービル

 建築家・黒川紀章の代表作「中銀カプセルタワービル」。メタボリズム(新陳代謝)思想の建築として愛されてきたものの、昨年の4月に解体されたこのビルのカプセルのひとつを、サンフランシスコ近代美術館が取得した。

サンフランシスコ近代美術館 photo:Jon McNeal © Snøhetta

 「中銀カプセルタワービル」は、古くなったカプセル(部屋)を交換することで半永久的に使用できる建物として設計されており、各カプセルは取り外すことを想定している。保存派オーナーと住人が中心となった「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト」は、解体後にビルのカプセルを複数取得した。同プロジェクトはカプセルやメタボリズムの思想を後世に伝えたいとの思いから「カプセル新陳代謝プロジェクト」を立ち上げ、140あったカプセル(部屋)のうち23カプセルを取り外し竣工時の姿に修復。それらを美術館や商業施設での展示や、宿泊施設などに再活用するために動いてきた。

南典孝 Facade 2011 archival pigment print

 今回、サンフランシスコ近代美術館が取得したカプセルは、黒川紀章が所有していた「A1302」。タワーの最上階にあり、映画にも登場したものだ。さらに、今回の取得に合わせて同館は、2010〜22年までの中銀カプセルタワーでの生活とインテリアを記録した、南典孝による9枚の写真作品も収蔵している。

A1302 撮影=中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト
A1302 撮影=中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト

 ほかのカプセルは、これまでに2基(オリジナルの内装を保持した状態と、内装を取り払ったスケルトン状態を1基ずつ)が松竹が東銀座に今秋オープンさせる新スペース「SHUTL(シャトル)」に収納。また、1基を淀川製鋼所が「動く中銀カプセルトレーラー」として移動可能かたちで再生している。

SHUTLの完成予想図

 なお、LAETOLI株式会社と株式会社黒川紀章建築都市設計事務所によって、中銀カプセルタワービルをデジタル空間で保存するプロジェクトも行われている。

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