文化庁に設置されている国の栄誉機関「日本芸術院」(院長:高階秀爾)が、令和4年度の新会員を発表した。
現会員による投票や会員総会の承認を経て決定した新たな候補者は、田渕俊夫(絵画)、宮田亮平(工芸)、横尾忠則(建築・デザイン)、杉本博司(写真・映像)、観世清和(能楽)、豊竹咲太夫(文楽)、麻実れい(演劇)、白石加代子(演劇)、黒柳徹子(映画)の9名(括弧内は分科名)。3月1日付で文部科学大臣から発令される。
日本芸術院は候補者の推薦理由も明らかにしており、杉本博司については「写真の起源はもとより、芸術とは何か、広く物事の根源を考える姿勢を貫いている。一個人の存在を超えた、悠久の時間の蓄積や流れを独自のコンセプトと表現手段を駆使して、今なお、さらに国際的に活躍している」(報道資料より抜粋)と評価。
また横尾忠則の推薦理由は、「油画作品を含め劇的かつ物語性を内包する視覚表現はデザイン、アートの領域を超えて一般市民の広く支持する作家の存在を形成した」「活発な創作活動は近年の受賞歴にも反映され、朝日賞、高松宮殿下記念世界文化賞が続いている。 著作も多く、後進への影響力は計り知れないものがある」(同上)とされている。
日本芸術院は「芸術上の功績顕著な芸術家を優遇するための栄誉機関」(日本芸術院令第1条)として設置された公的機関だが、その在り方をめぐっては推薦基準の不透明さなどが問題視され、2021年に見直しが提言された。
現在は推薦基準も公開されており、ジェンダーバランスに配慮することや、現代美術・バレエ・現代舞踊・現代演劇など、現代的要素を持つ芸術を対象に含むことなども明記されている。
また過去100年間にわたり固定化されていた分野も改定されており、「日本画」「洋画」「彫塑」は「絵画」と「彫刻」に再編。「建築」の分科名は「建築・デザイン」に変更され、第2部[文芸]に新たに「マンガ」分科が創設されたという経緯がある。
なお日本芸術院会員は非常勤の国家公務員に当たるもので、任期に終わりはない。また、年間250万円の「年金」が支給されるのも大きな特徴だ。今回の9名を加え、会員数は109名(定員:120名)となる。