公益財団法人西洋美術振興財団が主催し、日本における西洋美術の理解と文化交流の促進、西洋美術研究発展のため、顕著な業績があると認められる個人・団体に贈られる「西洋美術振興財団賞」。その第17回受賞者(学術賞、文化振興賞)が発表された。対象は最近2年間に国内の美術館で開催された西洋美術に関する展覧会等の関係者。審査員は大髙保二郎(早稲田大学名誉教授)、太田泰人(美術史家)、笠原美智子(公益財団法人石橋財団アーティゾン美術館副館長)、建畠晢(多摩美術大学学長)、三浦篤(東京大学大学院総合文化研究科教授)。
学術賞を受賞したのは、森美術館館長の片岡真実と、副田一穂(愛知県美術館主任学芸員)・松田健児(慶應義塾大学准教授)の2件3人。
片岡は「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人」(森美術館)の企画で受賞。財団側は、「コロナ・パンデミックの収束が見えないなか、ウクライナでは戦争が勃発するなど世界的に不安と緊張が強いられる今日、まことに時宜を得た企図」「そこには多くの国際展でキュレーターや芸術監督を務めた片岡氏が蓄積してきた経験と深い学殖、世界を股にかけての人的ネットワークが見事に生かされている」と受賞理由を説明している。
受賞した片岡は、「共同キュレーターのマーティン・ゲルマン、図録編集及びヴィデオインタビュー制作を担当したアソシエイト・キュレーターの德山拓一をはじめ、森美術館という組織全体に頂いたものと考えており、代表して心より御礼申し上げます」と喜びのコメントを寄せている(リリースより一部抜粋)。
いっぽうの副田一穂・松田健児は「ミロ展―日本を夢見て」(Bunkamura ザ・ミュージアム、愛知県美術館、富山県美術館の3館巡回)で受賞。財団側は同展を「『ミロと日本』を全体テーマとして画期的な内容といくつもの新知見を基盤にしての秀逸な展覧会」「同展とその図録は両氏各々の積年にわたる資料調査や発掘、地道な研究があってこそ実現をみた成果であり、内外のミロ研究への貢献も極めて高く、顕彰に十分に値するものと判断された」(リリースより一部抜粋)と評価している。
また団体に贈られる文化振興賞は、パナソニック株式会社(パナソニック汐留美術館)が受賞。2003年開館の同館は、これまでジョルジュ・ルオーのコレクションを中心にしたフランス近代美術に関する展覧会や、「建築・住まい」「工芸・デザイン」をテーマとした企画展を今年3月末までに計83回開催。なかでも「クールベと海展」(2021)、「サーリネンとフィンランドの美しい建築展」(同)などが評価された。
なお同賞顕彰式は10月31日に東京・上野の「精養軒」で開催される。