アートで「メンタルヘルス」を問い直す。ロンドンの医療研究財団がプロジェクト「マインドスケープス」を始動

ロンドンの医療研究財団ウェルカム・トラストが、アートや文化的なアプローチから「メンタルヘルス」を問い直す国際的なアートプロジェクト「マインドスケープス」をスタートさせた。

「マインドスケープス」が開催される4つの都市ベルリン、ニューヨーク、ベンガルール、東京を描いたイラスト Illustration by Ivyy Chen

 コロナ禍において心の健康がますます重要視されるなか、ロンドンの医療研究財団ウェルカム・トラストが「メンタルヘルス」を問い直す国際的なアートプロジェクト「マインドスケープス」をスタートさせた。

 パンデミックの影響でいっそう緊急性を帯びているメンタルヘルスの問題。いまや世界中で4人にひとりがなんらかのメンタルヘルス上の問題を抱えていると言われている。

 今回のプロジェクトは、医療や科学的な知見だけでなく、アートや文化的なアプローチからメンタルヘルスの問題に取り組むというもの。ベルリン、ニューヨーク、ベンガルール、東京の4都市を中心に、アーティスト・イン・レジデンスや展覧会、ワークショップ、パブリックプログラムなどが展開されていく。

 同プロジェクトの美術館提携プログラムでは、ニューヨークのブルックリン美術館、東京の森美術館、ベルリンのグロピウス・バウ、インドのベンガルール美術・写真博物館で、各都市のレジデント・アーティストによる展示が開催。日本では、飯山由貴がドメスティック・バイオレンスの問題を取り上げ、森美術館で開催中のグループ展 「地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング」で新作を発表している。

 また、東京ではアートを媒介に社会的な課題にアプローチするNPO法人インビジブルと提携し、様々なプロジェクトも開催。アート、医療、法律、教育など様々な分野の専門家が集まり、対話を通してアートとメンタルヘルスの新しい関係性と可能性を拓く「コンビーニング」や、食や映像、日本建築を専門とするアーティストや大工と協働し、オンラインの高校で学ぶ10代の生徒たちとともに行う「UI都市調査プロジェクトーアーティストと高校生によるメンタルヘルス共創調査―」などが計画されている。

 さらに、東京から移住者が近年激増する軽井沢の在宅医療ケアの拠点「診療所と大きな台所のあるところ ほっちのロッヂ」では、アーティスト・イン・レジデンスやワークショップなど今後も多彩なプログラムが展開予定となっている。

 ウェルカム・トラストの文化パートナーシップ責任者であるダニエル・オルセンは声明文で次のように述べている。「科学だけではこの仕事はできません。アーティスト、作家、キュレーター、デザイナー、映画制作者など、文化的実践者と密接に協力し、幅広い分野や専門的背景を持つ人々を集め、ひとりではできないことを一緒に実現していきたいと思います」。

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