「ロエベ ファンデーション クラフト プライズ 2022」の大賞が発表。馬の毛による帽子づくりの技法を用いたダヘー・ジョンが受賞

クラフトマンシップを顕彰するため、2016年にロエベ ファンデーションによって設立された「ロエベ ファンデーション クラフト プライズ」。その第5回の大賞と特別賞受賞者が発表された。

大賞を受賞したダヘー・ジョンと《タイム・オブ・セレニティ》(2021)

 2016年にロエベ ファンデーションが設立した「ロエベ ファンデーション クラフト プライズ」。その第5回の大賞がダヘー・ジョンの《タイム・オブ・セレニティ》(2021)に決定した。

 本プライズは「ロエベ」のクリエイティブ・ディレクターで、ジョナサン・アンダーソンが考案したもの。今日の文化におけるクラフトの重要性を認識し、顕彰することを目的としている。

 今回の「ロエベ ファンデーション クラフト プライズ 2022」では、建築家、ジャーナリスト、批評家、キュレーターなどから構成される審査員によって、330名のファイナリストから大賞が選出。1989年韓国生まれのダヘー・ジョンによる《タイム・オブ・セレニティ》が選ばれた。なお、日本人ファイナリストとしては田辺竹雲斎と小梛真弓も名を連ねている。

「ロエベ ファンデーション クラフト プライズ 2022」のファイナリストと審査員

 ジョンは韓国伝統文化大学の学部レベルで彫刻を学んだ後、同大学大学院でテキスタイルを学んだ。現在は同大学の博士課程に在籍しており、直近の展示に大賞を受賞した清州工芸ビエンナーレ(2021)や、「From the line to the threedimensional」(2021、済州島・GAT展示ホール)等がある。

大賞を受賞したダヘー・ジョンと《タイム・オブ・セレニティ》(2021)

 《タイム・オブ・セレニティ》は、これまで韓国では失われた技術と考えられてきた、500年の歴史を持つ馬の毛を使った帽子づくり技法によって制作されたバスケット。クラフトプライズの目的のひとつである伝統の復活と更新に向けられたその献身的な努力と、作品の緻密さ、透明感、軽やかさが評価された。

ダヘー・ジョン タイム・オブ・セレニティ 2021

 特別賞にはアンディル・ディヤルヴァーヌの《コーニッシュ・ウォール》(2019)と、ユリア・オベマイアの《フェボーゲン》(2021)が選ばれた。

 ディヤルヴァーヌは1978年生まれで南アフリカ在住。ケープタウンのググレツにあるシブヤイル・テクニカル・カレッジを経て、ポート・エリザベス・テクニコンでセラミックデザインを修了。国際陶芸アカデミーの会員で世界各地で研修を受けている。

アンディル・ディヤルヴァーヌ

 《コーニッシュ・ウォール》はコイル状の赤い土器で、イングランドのセント・アイヴスのリーチ・スタジオで制作された、コーサ文化とコーニッシュの海岸線の両方から影響を受けた作品であり、強さと大きさの逆説的な両立と、盆栽箒を使って細工された複雑なディテールが評価された。

アンディル・ディヤルヴァーヌ コーニッシュ・ウォール 2019

 オベマイアは1989年生まれでドイツ在住。州立ガラス ・ジュエリー専門学校で金細工職人の実習を受けた後、トリーア応用科学大学で宝石・ジュエリーの学部課程を履修。その後、ミュンヘンの応用科学大学で先進デザインの修士課程を履修した。

ユリア・オベマイア

 《フェボーゲン》は、宝石を構造物ととらえ、その構造の再定義を試みた作品。宝石の価値を定義するものが何かを問いかける構造的な姿勢が称賛された。

ユリア・オベマイア フェボーゲン 2021

 なお、これら30点の最終選考作品はソウル工芸博物館(SeMoCA)で7月31日まで展示される。

ソウル工芸博物館での最終選考作品の展示

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