終わりが見えないロシアによるウクライナ侵攻。イヴァンキフ歴史・地方史博物館がロシア軍によって攻撃され、ウクライナの国民的画家であるマリア・プリマチェンコの作品25点も焼失するなど、文化芸術分野にもその被害は及んでいる。
こうしたなか、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)は3月3日に「国連総会決議採択に伴うユネスコ声明」を発表。このなかでオドレー・アズレー事務局長は、「この暴力の激化──子供を含む市民の死者をもたらしている──はまったく容認できない」としつつ、ウクライナ国内にある7つの世界遺産をはじめとする文化遺産の保護を訴えている。
またユネスコは学校や文化・通信インフラなどの民間施設への攻撃を直ちに停止することを要求。学生や教師、芸術家、科学者、ジャーナリストを含む民間人の犠牲者が出ていることに遺憾の意を表した。
文化分野では、マリア・プリマチェンコの作品焼失に言及しつつ、ウクライナの文化財に対する攻撃を非難。1954年の「武力紛争の際の文化財の保護に関する条約(ハーグ条約)」とその2つの議定書(1954年、1999年)を尊重するよう求めるとともに、ウクライナ当局に対しては博物館のコレクションや文化財の保護に関する緊急ニーズに対応できるよう、ウクライナ国内の博物館館長との会議開催を打診したという。
また、UNITAR(国連訓練研究研究所)およびUNOSAT(国連衛星センター)と協力し、衛星画像解析を通じて文化遺産の被害を監視することも明らかにしている。
なお、日本ユネスコ国内委員会は3月4日、「ウクライナ情勢に関する日本ユネスコ国内委員会会長声明」を発表。「ロシア連邦のウクライナ侵略を最も強い言葉で非難」するとともに、「この侵略に抗議する世界中の文化人、科学者、教育者及び学生・生徒を含む市民との連帯」を表明している。