2021.12.22

文化庁の文化審議会が「文化経済部会」を設置。アートを含めた文化と経済の循環の創出を議論

文化庁の文化審議会が新たに「文化経済部会」を設置。アート、演劇、映画といった文化と経済の循環に関しての議論や提言を、各専門をもつ外部委員を交えながら行っていく。

文化庁

 文化審議会は「国語審議会」「著作権審議会」「文化財保護審議会」「文化功労者選考審査会」の機能を整理・統合して2001年に文部科学省に設置されたもの。この文化審議会に「我が国の文化と経済の好循環に資する事項について」調査議論をする部会として、今年「文化経済部会」が設置された。文化と経済の循環に関しての議論や提言を、外部委員を交えながら行っていく。

 委員には河島伸子(同志社大学教授)、島谷弘幸(独立行政法人国立文化財機構理事長/九州国立博物館長)が、そして臨時委員には美術、演劇、映画、文化振興といった専門分野を持つ14名が設置され、座長には臨時委員より吉見俊哉(東京大学教授)が選出された。

 同部会の配下には「アート振興ワーキンググループ」「基盤・制度ワーキンググループ」「グローバル展開ワーキンググループ」の3つのワーキンググループを設置。ここに専門委員を入れながら、より詳細で具体的な議論を行っていく予定だ。とくに美術分野に関連が深い「アート振興ワーキンググループ」では、アート支援組織のあり方や、ナショナル・コレクションの形成など、日本におけるアートの国際的な評価、市場活性化、国民資産の有効活用等が検討される。

 12月22日には同部会の第1期第1回が開催。座長の吉見は「Culture」の語源が「Cultivate(耕す)」であることに触れながら「文化と経済の好循環をいかにつくるかが核」と部会の方向性をまとめた。

 部会ではまず議論の端緒として「文化経済部会・議論の視点例」が示され、文化芸術領域と文化芸術活動が自律的・持続的に発展することの重要性に触れたうえで、文化芸術表現の「受け手」の想定や、表現の「担い手」の育成、そして文化芸術(振興)政策のあり方の必要性が示された。

 なかでも美術分野については「 領域全体の振興、発信を効果的に実現する体制を政策的に実現できているか」「美術作品やコレクションの価値創造を美術館が十分に実現できる運営となっているか」「領域を運営する資金が合理的に循環し、自律的・持続的な領域の発展を実現できているか」「 領域の拡大に政策・施策的に対応できているか(マンガ、アニメ、建築、デザイン、ファッション等)」といった議題が具体的に提案されており、今後はこうした論点に沿って部会を進めていく。

 委員はそれぞれの自己紹介とともに、上記の「視点例」についての私見を述べた。とくにアート分野では、臨時委員の山口栄一(アートパワーズジャパン代表理事)より、メディアアートやパフォーミングアーツなどへの発表やプロモーションの場として、NFTとメタバースの重要性を語るなどの提案がなされていた。

 第2回の部会は今回の各委員の意見を整理して議題をつくり、2月1日に開催される。