オーストラリア最大級の美術館のひとつであるニュー・サウス・ウェールズ州立美術館が、新しい美術館の建物を建設中。完成は2022年末を予定している。
「シドニー・モダン・プロジェクト」と呼ばれるこのプロジェクトは、プリツカー賞の受賞建築家ユニット・妹島和世+西沢立衛/SANAAが建築設計を担当するもの。既存の美術館建物の北側には、美術館と高速道路をつなぐ陸橋と、第二次世界大戦中に使用されていた2つの廃油タンクが存在しており、新館は主に廃油タンクの上に建設される。陸橋の大部分はオープンスペースとなり、新しい屋外パブリックアートガーデンとして利用される予定だ。
7つのパビリオンで構成される新館では、各パビリオンが周囲の環境やランドスケープに応じて異なる方向に配置。屋外のエントリープラザ、新しい展示スペース、芸術研究・教育スペース、多目的スペース、ルーフテラス、造園、ショップ、飲食施設などが新設される。
同プロジェクトでは、ニュー・サウス・ウェールズ州政府から2億4400万ドル、慈善団体から1億ドルの資金を調達。政府と慈善団体によるパートナーシップとしてはオーストラリアの芸術分野で過去最大規模となるこのプロジェクトにより、現在9000平米の展示スペースは1万6000平米とほぼ倍増し、年間来場者数が200万人以上に増えると期待されている。
今年11月には新館の上棟式が行われ、最上層にあるエントランス・パビリオンの屋根が完成。これに際して同館館長のマイケル・ブランドは、「美術館の変革には、建築的なものと美術館的なものの絶妙なバランスが必要だ。私たちの芸術の家は、社会におけるアーティストの継続的な役割を称えながら、シドニーでしかできない芸術、建築、景観の特別な体験を来館者に提供する」と語っている。
また、ニュー・サウス・ウェールズ州立美術館トラストの会長を務めているデイビッド・ゴンスキーは、「この芸術への意欲的な投資は、ニュー・サウス・ウェールズ州とオーストラリアに重要な貢献をし、現在も、そして何世代にもわたって、私たちの文化と多くの来館者の生活を豊かにしてくれるだろう」と期待を寄せている。