世界有数のルネサンス期の絵画コレクションで知られるイタリア・フィレンツェのウフィツィ美術館が、そのコレクションを周辺地域に分散展示することを計画していると「CNNトラベル」が報じた。
「Uffizi Diffusi(散在するウフィツィ)」と題されたこのプロジェクトは、同館のコレクションの一部をフィレンツェが位置するトスカーナ州の町や村の家々で展示し、地域全体をひとつの「散在する美術館」にしていくというもの。
詳細はまだ発表されていないが、同館は現在、「少なくとも60、もしかしたら100の展示スペース」を計画中。展示スペースの候補には、フィレンツェ西部のモンテルーポ・フィオレンティーノにあるメディチ家の別荘や、港町リヴォルノ、ベル・エポック様式の温泉町モンテカティーニ・テルメ、フィレンツェの東にある別のメディチ家の別荘があるカレッギなどが含まれている。
また、アール・ヌーボー様式の海岸沿いの町ヴィアレッジョや、メディチ家の別邸があるセラヴェッツァ、セルキオ川沿いにあるルッカなどの町も、同プロジェクトに参加して展示スペースを提供する意思を示しているという。
同プロジェクトは、アート作品を最初につくられた場所に「里帰り」させることで、地元の人々との直接的な結びつきを生み出すことを目的としているが、それだけではない。フィレンツェに過剰に集まる観光客を分散させることや、一部倉庫に眠っている作品に修復の機会をもたらすこと、そして地方に新たな雇用を創出することも期待されている。
プロジェクトの第1段階は今夏に開始予定。コレクションの分散によって美術館に不利益をもたらす可能性について同館のアイケ・シュミット館長は、CNNに対して「ウフィツィ美術館にはすでに3000点以上の美術品が展示されているので、これで十分だ。『Uffizi Diffusi』は、現在誰も見ることのできない作品をより落ち着いた親密な場所で展示することになるだろう」と語っている。