グッゲンハイム美術館が、同館史上初めて黒人女性を副館長兼チーフ・キュレーターに任命することが発表された。
今年6月初旬より就任するナオミ・ベクウィスは、2011年からシカゴ現代美術館で勤務。同館在職中、ケレン・シッターやレスリー・ヒューイット、ウィリアム・J・オブライエン、ジミー・ロバートなどの個展や複数のグループ展を企画し、現代美術におけるアイデンティティと学際的な実践の影響を中心に展覧会や出版物のプロジェクトを展開してきた。また、ヒューゴ・ボス賞2020の審査員や、アンディ・ウォーホル視覚芸術財団とランドロマット・プロジェクトの理事なども務めている。
今回の任命について、グッゲンハイム美術館のリチャード・アームストロング館長は声明文でこうコメントしている。「彼女の専門知識は、グッゲンハイムのコレクションと文化のなかで、包括的な視野を広げるうえで非常に貴重なものとなるだろう。私たちは、彼女と協力して新しい研究とプログラムの道を開拓し、現代美術との関わりを深めるための強力で有意義な方法を生みだすことを楽しみにしている」。
ベクウィスは今後、グッゲンハイム美術館のコレクション、展示、出版物、キュレトリアル・プログラムとアーカイブを監督し、同財団の関連美術館内で戦略的な方向性を提供。また、同館の執行役員として館長、評議員会、スタッフと密接に協力し、美術館全体の戦略やグローバル・イニシアチブの企画と実施に取り組むという。
同館では昨年6月、「Basquiat’s “Defacement”: The Untold Story」展のゲスト・キュレーターを務めた黒人女性チェードリア・ラブビエの告発が、人種差別的な扱いを受けたとして告発。その後、同館の職員たちは管理層にレターを送り、有色人種キュレーターの採用など職場における多様性と平等の強化を要求し、当時チーフ・キュレーターを務めていたナンシー・スペクターは退任に至った。
なお、同館は19年にアシュリー・ジェームズを同館史上初の黒人専任キュレーターとして採用。今回の任命により、ベクウィスは同館で役職に就く初の黒人キュレーターとなる。
ベクウィスはこの就任について、次のようにコメントを発表している。「グッゲンハイム美術館の偶像性と成果をいくら強調してもしすぎることはないが、過去の栄光に満足して精進を怠らず、美術史の神話を打破するようなプロジェクトを発表する準備はできている。私はこの重要な時期にグッゲンハイムとその情熱的なチームに参加できることに興奮しており、アートの物語を広げ、アートと文化の新たなリアリティをかたちづくるために働くことを楽しみにしている」。