ある黒人キュレーターの告発から見えた、白人多数のアメリカ美術界の問題
今月初め、グッゲンハイム美術館が「Blackout Tuesday」に賛同したことに、ツイッター上で強く反発した人物が注目を集めた。それは同館で昨年ゲスト・キュレーターを務めたチェードリア・ラブビエだった。同館と彼女のあいだに何があったのか。その背景を追ってみる。
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美術館における多様性の実情
ミネアポリスの警察官によってジョージ・フロイドが殺害されたことをきっかけに、全米各地で大規模な「Black Lives Matter」を掲げた人種差別への抗議行動が起こっているのを受け、企業や組織などが、相次いでこの動きへの支持を表明している。
美術界もこの流れに乗っているものの、業界全体では依然有色人種の占める割合が少ないのが現状である。アンドリュー・W・メロン財団が2019年に発表した報告書によると、キュレーターにおいては84パーセント、運営に関わるポジションでは88パーセントが白人で占められている。国勢調査で自らの人種を「白人」と回答した割合が76.5パーセント(2019年)であることを考慮すると、社会の実態よりも白人優勢の業界であると言える。
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同財団は、「アメリカの美術館が、この国の豊かな多様性を象徴し、受容する場になることで、コレクションやプログラムが全ての人々にとって意味を持ち、喜びとともに享受できるものになっていく」と訴えている。その点で、組織としてのビジョンを定めるリーダー的ポジションに多様性を確保することは重要となる。しかし実際の現場で人種の多様性がいまだ実現できていない場合、そうした文化施設から発せられる「人種差別反対」の声は、どれだけ真摯なものとしてとらえられるのだろうか。