2020.6.2

黒人男性死亡への抗議デモに「連帯」を。メトロポリタン美術館などアート界が反応

アメリカ・ミネアポリスで黒人男性ジョージ・フロイドが白人警官によって殺害された事件。これに端を発して全米で続く抗議デモに対し、メトロポリタン美術館をはじめとするアメリカのアート界も連帯を示している。

ホイットニー美術館のInstagramより
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 5月25日、アメリカ・ミネソタ州ミネアポリスで黒人のジョージ・フロイドが白人警官に押さえつけられ、後に死亡する事件が発生。以降、抗議デモや暴動がミネアポリスを中心に、アトランタ、ロサンゼルス、ニューヨークなどアメリカの40以上の都市、そしてロンドンやベルリンにまで広がっている。

 この状況に対し、メトロポリタン美術館の理事長兼CEOのダニエル・ウェイスと館長のマックス・ホルラインは、同館のスタッフへのレターを公開。彼らはこのレターで、「全国規模の抗議行動は、アメリカにどれだけの不正義が蔓延しているか、そして変革の必要性がどれだけ差し迫っているかを改めて示すものだ」とデモの意義を肯定している。

 また、同館は「黒人コミュニティと連帯しており、正義を求めるあなた方に加わる」と約束。「ここ数日、人種的不正をめぐる全国的な議論が高まるなか、私たちはソーシャルメディアを利用し、この国の複雑な過去と現在に思いを馳せる作品を取り上げている」と説明している。

 同館はInstagramで、アフリカ系アメリカ人アーティストであるグレン・リゴンの《Untitled:Four Etchings》(1992)とフェイス・ギングゴールドの《Freedom of Speech》(1990)の画像を投稿。「私たちは今後もソーシャルメディアを活用し、全国的な会話に貢献する。今後数週間のうち、ブログやその他のオンラインプログラムでこうした問題に思慮深く対応していきたいと考えている」。

メトロポリタン美術館のInstagramより

 ウェイスとホルラインはレターでこう続ける。「私たちは、Met(メトロポリタン美術館)コミュニティとして団結して悼む。この国での社会正義の取り組みを支援するために、個人として、そして博物館として、どのようにしてより多くのことができるのかを熟考しなければならない」。今後数週間のうち、最新の出来事や新型コロナウイルスへの美術館の対応、そして再開計画などについて、スタッフ全員とオンラインで会話する予定だとしている。

 いっぽう、ニューヨーク近代美術館(MoMA)もInstagramで、デイビット・ハモンズやジェイコブ・ローレンスの作品を共有。同館は、「耐えがたい悲劇と暴力により影響を受けているアメリカ各地のコミュニティを嘆き、より良い未来への道を見つけるために団結する」とコメントしている。

 グッゲンハイム美術館はInstagramで次のように投稿。「歴史を通じて、アーティストは、政治的・社会的危機の時代において、集団的トラウマを目に見えるようにし、厄介な問題に直面し、盲点を検証してきた。美術館は一時的に閉鎖されているが、私たちのコミュニティ、スタッフ、メンバー、訪問者、フォロワーに、我々が耳を傾けていること、あなたと一緒に悲しんでいることを知ってもらいたい。私たちは、社会正義を求める集団行動を支持する」。

グッゲンハイム美術館のInstagramより

 ホイットニー美術館は「黒人の命は大切だ」とし、美術館は「スタッフ、アーティスト、仲間、支援者、訪問者などのコミュニティと、また人種差別や警察による残虐行為を非難する全国の抗議者と連帯する」と声援している。

 また、メガギャラリーも抗議デモに対して支援の意思を表明。ニューヨークに拠点を置くガゴシアンやデイヴィッド・ツヴィルナーはInstagramで、アメリカ自由人権協会やブラック・ライヴズ・マターなどの組織への支援をフォロワーに呼びかけている。

 ガゴシアンは、「私たちの考えや行動のなかに人種的不公正を集団的に探し求め、是正するために、引き続き努力しなければならない」とし、「歴史を通してアーティストが不平等を強調し抗議してきたように、変化を求める声を持ち、共に前向きな未来に向けて前進するよう私たちを鼓舞してくれるアーティストに期待している」とコメント。

ガゴシアンのInstagramより

 ツヴィルナーはこう語る。「私たちは、アメリカ中の都市で起きている出来事を目撃している。それは、この国で長く続いてきた人種的不公正の結果だ。私たちは、あらゆる形態の人種差別や警察の残虐行為を非難するにあたり、我々のコミュニティ、つまりアーティスト、スタッフ、そして鑑賞者とともに立ち向かっている」。

 同じくニューヨークに本社を置くペース・ギャラリーは、「私たちは、#ジョージ・フロイド、#アマド・オーブリー、#ブレオナ・テイラーの死により悲しみと怒りに満ちている。アメリカ人の人間性が、制度的な人種差別によって繰り返し否定されていることを、手をこまぬいて傍観することはもはやできない。歴史的に声が沈黙してきた人々のために、自らを教育し、声を上げ、発言することは、私たち全員の義務だ」と述べている。

 なお、ニューヨークに支店を持つハウザー&ワースやペロタンも声明文を発表している。ハウザー&ワースは、「今日まで何世紀にもわたって続いてきた、組織的に根強く根付いた黒人に対する人種差別と不公正を嘆いて非難する」とし、「警察の残虐行為、人種的憎悪および白人の優位性、不平等を維持する公的制度に反対して行動するすべての者を完全に支持する」とコメント。

 ペロタンは、関連組織に寄付したうえで、「沈黙は選択肢ではなく、私たちは引き続き声を上げる」と語る。