キングス・カレッジ・ロンドンとイプソス・モリが今年6月に実施した調査によると、新型コロナウイルス感染症は人間の身体や精神だけでなく、睡眠や夢にも影響を与えているという。そんなコロナが夢に与えた影響を探るプロジェクトが、イギリスのロンドン博物館によって発表された。
今年4月、同館は新型コロナウイルスに関連する資料の収集を開始し、ロンドン市民に対しても資料提供を呼びかけている。「睡眠の守護者」と題された今回のプロジェクトは、この資料収集の新たな取り組みで、カナダのウェスタン大学に拠点を置く「夢の博物館」と提携し、ロンドン市民がコロナ禍に見た夢を収集するというものだ。
2021年1月中旬までに参加者の口述記録を集め、2月には招待された参加者がZoomを通じてそれぞれの夢について話す。また、それらの記録はロンドン博物館のコレクションにも追加予定となっている。
同館のデジタルキュレーター、フォティニ・アラヴァニは、このプロジェクトについて次のように語っている。「ロンドン市民の夢を彼ら自身の言葉で収集することで、パンデミックからの重要な共有体験を記録することができるだけでなく、生の出会いや個人的な証言としての夢を初めてロンドン博物館の常設コレクションに加えることで、『博物館のオブジェ』の定義を広げることができる」。
従来では、アーティストが夢を絵画などの形式で表現し、博物館がこれらの作品を収集することが多かった。「今回のプロジェクトでは、夢が精神的な健康と外部ストレスに対処する方法、とくに危機の時代に、どのような洞察を提供するかを探ることを目指し、一人称のオーラルヒストリーとして収集し、より感情的で個人的な物語を後世に伝えることを目的としている」。
また、カナダの夢の博物館のクリエーターであるシャロン・スリウィンスキーは、今回の連携についてこうコメントしている。「ロンドン博物館とのこのパートナーシップは、ジークムント・フロイトの夢に関する記述からインスピレーションを得ている。夢が私たちの心の整合性を維持するための『睡眠の守護者』であり、私たち自身の言葉でそれぞれの経験を明確にすることを守っている」。
スリウィンスキーによれば、夢を見ることは、現在私たちが直面している困難を乗り越えるための手段のひとつ。「この新しい研究は、社会的紛争を乗り越えるためのメカニズムとしての『ドリームライフ』の重要性と、パンデミックが人間の状態にどのように影響したかをさらに理解するための豊富なリソースを提供することを目的としている」。