田中泯が名作『ドン・キホーテ』に挑む。編集工学者・松岡正剛とタッグで

「舞台芸術」「ダンス」「音楽」「美術」の枠ではとらえられない独自の身体表現を確立する田中泯。今回、編集工学者・松岡正剛とタッグを組み、ミゲル・デ・セルバンテスの名作『ドン・キホーテ』に挑戦。『村のドン・キホーテ』として上演する。上演期間は12月4日〜6日。

『村のドン・キホーテ』チラシ(表) 宣伝美術=町口覚+浅田農(MATCH and Company Co., Ltd.) 宣伝写真=平間至

 人間はなぜ古代より踊ってきたのか。田中泯は、「舞台芸術」「ダンス」「音楽」「美術」の枠ではとらえられない自らの身体表現の根底に、一貫した「踊りの起源」への憧れとこだわり、そして身体の「生きる場所」そのものへの疑いを持ち続けてきた。

 その田中がミゲル・デ・セルバンテスの名作『ドン・キホーテ』に挑戦。オブジェマガジン『遊』の創刊者としても知られる編集工学者・松岡正剛と再びタッグを組み、『村のドン・キホーテ』として上演する。

 松岡が自著新刊『千夜千冊エディション 物語の函』の口絵撮影を田中に持ちかけるなど、長きにわたって知と身体を巡り、様々な表現の場面で交流を続けてきた盟友であるふたり。オデュッセイアー、神曲、リア王、ドン・キホーテ、カラマーゾフの兄弟──ギリシア古典からロシア文学まで、まさに松岡の世界読書術の極みというべき同書において、松岡は、その口絵で田中をドン・キホーテとして登場させた。セルバンテスの創造したドン・キホーテの世界は、尊厳ある人間の観念を通して見た社会の矛盾や不合理への批判であり、まさに田中が踊りを通して希求してきたものでもあったという。

 2018年秋、12年ぶりに劇場空間に復帰した田中。20年1月には『形の冒険Ⅱ - ムカムカ版』を上演し、オーディションで集まった若者たちと協働するという舞台づくりにも挑んだが、直後に世界を覆った新型コロナウイルス感染拡大によって、踊りの場を奪われた。

 住まいのある山梨で田畑を耕し、作物の種を蒔き、茶を摘みながら、静かに自らと向き合う時間を過ごしていた田中だが、「世界はこれでいいのか、人類はこれでいいのだろうか」という沸々とたぎる思いを抑えきれず、再び舞台に立つことを決心したという。

『村のドン・キホーテ』チラシ(裏) 宣伝美術=町口覚+浅田農(MATCH and Company Co., Ltd.) 宣伝写真=平間至

編集部

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