ル・コルビュジエの船「アジール・フロッタン」がセーヌ川から引き上げ。一般公開は2022年3月を予定

ル・コルビュジエ作品唯一の「動く」建築として知られ、2018年の増水でパリ・セーヌ川に沈んだ「アジール・フロッタン(浮かぶ避難所)」。その引き上げが成功し、今後は復元作業が進められていく。

セーヌ川に浮かぶアジール・フロッタン (C) スターリン・エルメンドルフ撮影

 ル・コルビュジエがリノベーションを手がけ、作品のなかで唯一の「動く」建築としても知られる「アジール・フロッタン(浮かぶ避難所)」。2018年の増水でパリ・セーヌ川に沈んでいたこの船の引き上げが、10月19日に完了した。

 「アジール・フロッタン」は、世界第1次大戦後のパリ市内にいた難民の避難所として1929年にル・コルビュジエがリノベーションし、弟子の建築家・前川國男が担当した船(ルイーズ・カトリーヌ号)のプロジェクト名。95年まで様々な難民のために使われ続けてきた。

 その後は老朽化により度々廃船の危機にさらされたが、2006年には日仏共同の修復プロジェクトが開始。08年には建築家・遠藤秀平による工事用シェルターの設計、17年には日本企業による桟橋の寄贈などが進められた。

2018年の増水により水没

 しかし18年、セーヌ川の増水により船体が水没し、一時はプロジェクトが暗礁に乗り上げたものの、19年に国際文化会館が助成・協力を決定。日本建築設計学会により「アジール・フロッタン復活プロジェクト」が始動し、ついに引き上げに成功した。

 自身が提言した「近代建築の5原則」を体現する内部空間を「サヴォア邸」に先立って実現し、コルビュジエの作品のなかでも重要な位置にある「アジール・フロッタン」。今後は船体補修と内部の修復を行い、コルビュジエのオリジナルデザインを復元した文化施設として、2022年秋の公開を目指すという。

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