金沢21世紀美術館やルーヴル美術館ランス別館などを手がけ、日本を代表する建築家のひとりとして知られる妹島和世。そのひとつの作品の設計から完成までの様子を記録したドキュメンタリー映画『建築と時間と妹島和世』が、10月3日よりユーロスペースほかにて全国順次公開される。
妹島和世は1956年茨城県生まれ。95年に建築家・西沢立衛とともに「SANAA」を設立し、数多くの作品を手がけてきた。2010年には第12回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展の総合ディレクターを務めたほか、SANAAとしては日本建築学会賞、ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展金獅子賞、プリツカー賞などを受賞。また個人では芸術文化勲章オフィシエ、紫綬褒章などを受章し、高い評価を得ている。
本作は、そんな妹島が手がけた大阪芸術大学アートサイエンス学科の新校舎を追ったものだ。この校舎は、UFOが舞い降りたような有機的な外観をした建築であり、内部は細い柱で支えられた開放的な空間。内と外との自然なつながりを感じられる校舎だ。
誰もが立ち寄れる見晴らしのよい丘の上の「公園のような建物」を目指して設計された新校舎。本作は、その構想から完成までの3年6ヶ月という時間を追い、ひとりの建築家がひとつの建築に向き合う姿を鮮明に描き出す。
監督・撮影を担当したのは、ル・コルビュジエや丹下健三などの建築物を撮影してきた写真家・ホンマタカシ。ホンマは90年代に妹島と出会い、それ以来、妹島建築を撮影してきた経緯がある。ホンマの映像の力が、妹島の作品を通して「もうひとつの作品」をつくりあげる。