2019年10月12日から13日に関東地方を縦断した台風19号により、9つの収蔵庫への浸水と収蔵品の被害が確認された川崎市市民ミュージアム。10月22日より、独立行政法人国立文化財機構が有する文化遺産防災ネットワーク推進会議の協力のもと、被災した所蔵品の応急措置や、施設での一時保管を進めてきた。
このたび、川崎市は収蔵品レスキューの状況を公開。カビの発生や搬出経路の確保などの理由から、これまで搬出等を行ってこなかった収蔵庫1(民俗資料)と収蔵庫2(考古資料)からの搬出も、それぞれ2020年1月14日と23日より開始したと発表し、今年度中を目処に浸水被害を受けた収蔵品を地階から搬出する方針を示した。
川崎市の収蔵品の救出を支援してきたのは、文化遺産防災ネットワーク推進会議に所属する9団体と、その他の5団体(1月25日時点)。作品搬出後の実作業として、搬出した作品の洗浄や、カビ増殖を防ぐための冷凍庫による緊急保管、防カビや殺菌のために気体の薬剤を浸透させるくん蒸などを、必要に応じて行っている。これらの処置をほどこし、すべての被災作品を一時保管状態にするのが当面の目標だ。
1月25日時点で出庫を終えたのは、収蔵品約22万9000のうち約33パーセントにあたる約7万5200。懸念されていたように、作品を意味づける主要な部分が失われたと見られるもの (写真作品、油彩画、映画フィルムなど) や、素材が変質して崩壊し原形に戻すことが困難なもの (埋蔵文化財関連資料など)も、収蔵庫から搬出する段階で確認されている。
川崎市は今後も、レスキューの状況を随時報告していくとしており、作業の経過を見守りたいところだ。