2001年の第1回開催以来回数を重ね、2020年に第7回を迎える「ヨコハマトリエンナーレ2020」が、アーティスティック・ディレクター(以下、AD)を発表した。これまで、同トリエンナーレでは日本人がADを務めてきたが、次回は海外のコレクティヴであるラクス・メディア・コレクティヴが務める。
ラクス・メディア・コレクティヴは、インド・ニューデリーを拠点に活動するジーべジュ・バグチ、モニカ・ナルラ、シュッダブラタ・セーングプタの3名によるアーティスト集団。
「ラクス(Raqs)」とはペルシャ語、アラビア語、ウルドゥー語で回転運動や旋回舞踊によって到達するある種の覚醒状態や、立ち現れてくる存在との一体感を表す言葉。ラクス・メディア・コレクティブは精力的に思索し続ける「動的熟考/kinetic contemplation(ラクス・メディア・コレクティヴによる造語)」を活動の核に、作品の制作だけでなく、展覧会のキュレーション、パフォーマンスのプロデュース、執筆など多岐にわたる活動を展開してきた。
キュレーターとしては、マニフェスタ7(イタリア、2008)をはじめ、第11回上海ビエンナーレ(2016-17)といった国際展をキュレーション。また作家としては、3回のヴェネチア・ビエンナーレ(第50回、2003年/第51回、2005年/第56回、2015年)のほか、上海ビエンナーレやシドニー・ビエンナーレ、ドクメンタなどに参加。日本国内でも奥能登国際芸術祭(2017)、「チャロー!インディア:インド美術の新時代」(森美術館、2008-09)などに参加している。
今回の選考にあたっては、14名の推薦者から21組の候補が挙がり、5名の選考委員(浅田彰、逢坂恵理子、蔵屋美香、椹木野衣、鷲田清一)が2段階で選考を実施。候補の多くは外国人だったという。ラクス・メディア・コレクティヴの選考理由について、選考委員会委員長の浅田は、ラクス・メディア・コレクティヴによる提案が「ドゥルーズ&ガタリの思想を語る横浜の日雇い労働者に密着したイギリス人人類学者のルポルタージュなどをソースとし、そこから参加者が次々に連想の網を広げていくという手法からして独自性が際立つ」とコメント。「状況に柔軟に対応しながら企画を実現していく能力をも示しており、彼らであれば横浜ならではのトリエンナーレを確実に実現できるだろうと期待させてくれるものでした」としている。
なおヨコハマトリエンナーレ2020は、2020年7月上旬から10月中旬までの開催が予定されている。