今年6月、1943年のオープン以来65年間にわたって親しまれてきた名古屋の百貨店「丸栄」が惜しまれつつ閉店。その本館エレベーターで使用された洋画家・東郷青児デザインによるエレベーターの扉絵が、入札方式で販売される。入札額は54万円からスタートし、入札単位は1万円(送料別)。愛知県内のみの配送で、引き渡しは2019年2月以降となるという。
東郷青児は、画業初期にはイタリア未来派とも深く関わり、大正・昭和の美術をリードした鹿児島県出身の洋画家。青山学院中学部在学中から画才を発揮し、1916(大正5)年、第3回二科展に《パラソルさせる女》を初出品、二科賞を受賞し華々しくデビューを飾った。その5年後には渡仏し、ピカソらとも交流。そして約7年間の滞欧後、帰国した東郷は《超現実派の散歩》などシュルレアリスム風の作品を制作。その後「青児美人」とも称される甘美で幻想的な女性像を確立し、文筆や壁画、挿絵、装丁にも活躍の場を広げ、大衆の人気を博した。また東京・西新宿にはその名を冠した美術館「東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館」がある。
女性をモチーフとした「丸栄」の扉絵は、やわらかな色調と曲線が特徴で、閉店決定後は、その行方について問い合わせが相次いでいたという。20セットのうち10セットが販売され、1セットの重さは80キロにもおよぶという扉絵。その行き先に注目が集まっている。