吉増剛造は1939年東京生まれの詩人、1960年代から現在に至るまで日本の現代詩をリードしつづけてきた。その活動は詩の領域にとどまらず、写真や映像、造形など多岐に渡る。本展ではその活動を、詩集、写真、直筆原稿といった3つの観点から追い、関連する他の作家の作品とともに紹介する。
吉増は64年の第一詩集『出発』刊行以来、約20冊の詩集を含む70冊を超える著作を発表してきた。本展第1章「詩集の彼方へ」では、その膨大な詩作の中から、代表的な10冊の詩集を時代ごとに選び、吉増の活動を振り返る。また、高村光太郎や中西夏之など、それぞれの時代で関わった人々の作品や資料をともに展示する。
第2章「写真を旅する」では、国内外を旅しながら創作を続ける吉増が、その旅の中で制作、発表してきた写真作品を展示。その写真家としての活動を、近年取り組んできた多重露光写真を中心に紹介する。
吉増の作品では、文字を記した原稿そのものが書や絵画のように豊かなイメージを伴うものとなっており、近年では細やかな文字の上から鮮やかなインクで彩るなど、より絵画的な表現を強めている。第3章「響かせる手」では、現在の吉増の作品とともに、吉本隆明や萩原朔太郎といった作家の直筆原稿や、松尾芭蕉や与謝蕪村による書跡を合わせて紹介。「手でことばを記す」という行為そのものを深めていく吉増の表現に迫る。