ムン・キョンウォンとチョン・ジュンホはともに1969年生まれソウル在住のアーティスト。2009年の「News from Nowhere」プロジェクトを機にムン&チョンとして協働を開始した。多分野の専門家とのコラボレーションを重視したリサーチによって、現代の諸問題を扱う。映像メディアを中心に制作しており、その特性を活かし、鑑賞者の想像力を刺激して、先見的な思考を生み出す作品を発表している。
本展での展示もまた「News from Nowhere」プロジェクトの一環であり、「フリーダム・ヴィレッジ(自由の村)」として知られる臺城洞(テソン・ドン)の小さな農村についてのリサーチから制作、発表を行う。
「フリーダム・ヴィレッジ」は北朝鮮と大韓民国の国境、約4平方キロメートルに敷かれた非武装地帯内に位置し、休戦当時の住人とその直系子孫だけ居住できるコミュニティとして、朝鮮戦争の終わりから現在も変わらず存続している。韓国国内でもあまり知られていないこの村は、歴史に取り残された時代の闇であり、見て見ぬふりをするような意図的な忘却の象徴である。
本展では、村の住人が撮影した写真によるドキュメンテーション、アーティストが制作した白黒フィルム、数点の映像、彫刻によるインスタレーションが展示される。作品の中心となるフィルムでは、朝鮮戦争のニュース映像が架空の荒廃した実験室の映像に混ざり合い、ブレヒトの「異化効果」を用いた批判的な考察を促す。
ムン&チョンはこの試みを、60年余り時間が止まったこの村を通して、過去の亡霊を呼び起こし、今を生きる人々が世界を取り巻く矛盾や制限にどう向き合うのかを示すものだとする。政治的な問題に関して制限されがちな、感情による理解を、彼らはフィクションとドキュメンタリーが融合した映像により、想像力でナビゲートする。