小川信治は、実在の観光名所の風景や、名画や映画のシーンの一部を改変することにより、重層的な世界の可能性を提示する作品を制作してきた。
超絶技巧とも言えるような描写技術で緻密に描きこまれた小川の鉛筆画は、離れたところから眺めると古いモノクロ写真のようにも見える。しかし、描かれている光景には自然界には存在しえない改変が施されている。
本展でも展示される「対称/非対称」をテーマとした作品では、まったく同じ姿の2つの対称的な建築物が前景に、その背後には反対に非対称な風景が広がる。また、「Rondo」というシリーズでは、たとえば月がどこへいっても追いかけてくるように、場所を変えても同じ風景が繰り返し現れてくる様子を画面に描き出し、見る者に幻惑をもたらす。
本展では、110x150cmの大きな紙に描かれた新作を中心に、大小の鉛筆画、切手をモチーフとしたコラージュなど、約14点が展示される。