宮本隆司は1947年東京都生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業後、建築雑誌の編集部員を経て写真家として独立し、建築物を中心に、都市の変貌や崩壊、再生の光景を撮影してきた。96年には第6回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展で金獅子賞、89年には第14回木村伊兵衛賞を受賞し、『建築の黙示録』(88年)、『九龍城砦』(97年)などの写真集は、国内外で高く評価されている。
タカ・イシイギャラリーでは初となる本展では、ネパールの城砦都市ロー・マンタンを撮影した、初公開作品約22点を展示する。
96年5月、詩人・佐々木幹郎の誘いを受け、初めてロー・マンタンを訪れた宮本。ネパールの奥地に位置するロー・マンタンでは、91年まで外国人の出入りが禁じられ、電気やガスといった近代都市設備もなく、人々は自給自足の暮らしを営んでいた。宮本は、まさに秘境ともいうべきこの場所で、大判カメラを用いた9日間にわたる撮影を行った。
意味や役割から解き放たれた「もの」としての建築を見つめ、社会的な課題やノスタルジアのみにとどまることなく、空間そのものの変質を浮き彫りにしてきた宮本。本展で初めて発表される作品群には、内と外を規定し、その土地の生活文化を育んだ、堅牢な城砦都市の様相が写し取られている。