NEWS / EXHIBITION - 2017.5.5

日本初公開! インドの写真家、ダヤニータ・シンの「ポータブル美術館」とは?

写真のあり方を大きく変えたダヤニータ・シンの移動式美術館。5月20日から日本の美術館では初の個展「ダヤニータ・シン インドの大きな家の美術館」が恵比寿・東京都写真美術館にて開催される。

リトル・レディース・ミュージアム–1961年から現在まで 2013 アーカイバル・ピグメント・プリント 撮影=ノニー・シン

リトル・レディース・ミュージアム–1961年から現在まで 2013 アーカイバル・ピグメント・プリント 撮影=ノニー・シン

 ダヤニータ・シン(1961年、ニューデリー生まれ)は、世界でもっとも活躍の著しい写真家のひとり。アーメダバードの国立デザイン大学やニューヨークの国際写真センター(ICP)で写真を学んだ後、娼婦や児童労働、貧困などインドの深刻な社会問題をフォトジャーナリストとして8年間撮り続けた。インドのステレオタイプな写真を撮ることに疑問を感じ始め、1990年代後半からはインドの富裕層やミドル・クラスをテーマに作品を制作・発表。現在までに数々の国際現代美術フェスティバルや国際展に参加し、注目を集めている。

 彼女が写真家として活躍する契機となったのが、1989年に『ロンドン・タイムズ』誌に依頼されたユーナック(去勢された男性、第三の性)の取材。そこで紹介されたのがモナ・アハメドだった。ダヤニータとモナは階級社会のインドでは別世界の者同士。しかし、13年に及ぶ交流を経て「取材者とその被写体」以上の関係を構築した。お互いに信頼し合っているからこそ、ダヤニータの写真に写るモナは真実であり、自己のアイデンティティについて訴えかけている。

ダヤニータ・シン マイセルフ・モナ・アハメド 1989-2000 ゼラチン・シルバー・プリント 東京都写真美術館蔵

 近年は移動式の「美術館」を考案し、全体を「インドの大きな家の美術館(Museum Bhavan)」と名付けた。写真は彼女によって不定期に入れ替えられるため、写真と写真の間にも新たなストーリーが生まれる。収蔵作品があり、キュレーターがいて、展示替えが行われるという、美術館として機能している革新的な作品だ。

ミュージアム・オブ・チャンス 2013 アーカイバル・ピグメント・プリント 撮影=ステファン・ホワイト

 最新作の《ミュージアム・オブ・シェディング》(2016)は、建築と空間を写した静謐な作品。この最新作に加え、7冊の本がボックスに入った《セント・ア・レター》(2007)や2つのスーツケースの中に44冊の写真集が収納された《スーツケース・ミュージアム》(2015)など、ダヤニータ・シンの作品群は写真の新たな可能性を切り開いている。