断片化する感情の風景へ。リー・キット個展「いくつかの壊れた日々とゆび」がシュウゴアーツで開催へ

香港生まれ、台北拠点のアーティスト、リー・キットの個展「いくつかの壊れた日々とゆび」がシュウゴアーツで開催される。会期は12月13日〜2026年1月24日。

リー・キット mainstream 2025 spray paint on stainless steel 130x105cm

 東京・六本木のシュウゴアーツで、香港生まれで台北を拠点に活動するアーティスト、リー・キットの個展「いくつかの壊れた日々とゆび」が開催される。会期は12月13日〜2026年1月24日。

 リーは、初期の布地に絵画を施し、それらをテーブルクロスやカーテンとして日常空間に介入させた作品から、ポップソングや映画、都市の音、日用品やテキストを取り込むインスタレーションまで、絵画の概念を空間へと拡張してきた作家である。その表現には、急激な社会変化を経験してきた故郷・香港の風景や感情が深く根ざしている。近年は、カッセルのフリデリチアヌム美術館での個展や、大阪・国立国際美術館「非常の常」展への参加など、国際的な発表が続いている。

 近年のリーは、金属板に工業用スプレーを用いて描く新たな手法を展開している。スプレーは混色せず、乾燥が早いため偶然性が入り込む素材だが、リーは指先の繊細な操作を重ねることで多層的な表面を生み出す。絵具が浸透する布やダンボールとは異なり、金属の硬質な表面ではイメージが内部構造から独立し、純粋な「表層」として立ち現れる点が特徴である。

 本展タイトル「いくつかの壊れた日々とゆび」は、因果では説明しきれない痛みや怒り、感情の余剰を抱え込む人物像を想起させるもの。展覧会では、日本での滞在制作による新作ペインティングを中心に、2020年から展開している写真ポートフォリオの第3弾となる新エディションも公開予定である。絵画・写真・インスタレーションが交差しながら広がる、リー・キットの最新の表現に触れる機会となるだろう。

Portfolio Ⅲ 2025 inkjet print on watercolor paper a set of 11 prints, ed.30

編集部