麻布台ヒルズからFUJI TEXTILE WEEK、アニッシュ・カプーアの個展まで。今週末に見たい展覧会ベスト11

今週開幕・閉幕する展覧会から、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

展示風景より、オラファー・エリアソン《蛍の生物圏(マグマの流星)》(2023)

新テーマは「地球環境」「ロボット」「老い」。日本科学未来館 新常設展

展示風景より、「老いパーク」。総合監修は荒井秀典(国立長寿医療研究センター 理事長)画像=日本科学未来館

 11月22日、東京・青海の日本科学未来館の常設展が7年ぶりにリニューアル。「地球環境」「ロボット」「老い」の3つのテーマから4つの展示「プラネタリー・クライシス -これからもこの地球でくらすために」「ハロー! ロボット」「ナナイロクエスト-ロボットと生きる未来のものがたり」「老いパーク」が新たに公開された。

 2001年に国立科学館として設立された未来館は、21年に浅川智恵子が2代目館長に就任。それに伴い発表された同館の中長期ビジョン「Miraikan ビジョン 2030」のなかには、一人ひとりが「自分のこと」として未来を考えられるよう、「Life」「Society」「Earth」「Frontier」といった4つのテーマが設けられている。今回の新常設展のテーマは、そのうちの3つから誕生している。レポートはこちら

公開日:2023年11月22日〜
住所:東京都江東区青海2-3-6 3階・5階常設展ゾーン
電話番号:03-3570-9151 
開館時間:10:00~17:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:火(ただし、祝日や春夏冬休み期間などは開館の場合あり)、年末年始(12月28日~1月1日)
料金:大人 630円 / 18歳以下 210円

アートだからこそ見える布の向こうの人々の営み。FUJI TEXTILE WEEK 2023(富士吉田市)

展示風景より、ネリー・アガシ《mountain wishes come true》

 1000年以上続く織物の産地、山梨県富士吉田市。ここを舞台としたテキスタイルと芸術が融合する国内唯一の芸術祭「FUJI TEXTILE WEEK 2023 」が12月17日まで開催中だ。

 今年で3回目を迎える本イベントは「アート展」と「デザイン展」で構成。テーマを「Back To Thread/糸への回帰むアート展」とし、国内外11組のアーティストがテキスタイルをテーマに、使われなくなった富士吉田の旧日糸屋や工場跡地を舞台に作品を展示している。織物産業を担ってきた建物を保存し、活用していくことも意図されている。総合ディレクターは南條史生、キュレーターにアリエ・ロゼンと丹原健翔。レポートはこちら

会期:2023年11月23日〜12月17日
会場:山梨県富士吉田市下吉田本町通り周辺地域
開館時間:10:00〜16:00
休場日:月
料金:一般 1200円 ※一部無料コンテンツあり

作品を通じて見る現代の監視社会。「アニッシュ・カプーア_奪われた自由への眼差し_監視社会の未来」(GYRE GALLERY)

展示風景より

 インド文明とヨーロッパのモダニズムを融合させ、シンプルなフォルムのなかに深い精神性を表す作品で知られている国際的な現代アーティスト、アニッシュ・カプーア。その個展「アニッシュ・カプーア_奪われた自由への眼差し_監視社会の未来」が、東京・神宮前のGYRE GALLERYで開催中だ。会期は2024年1月28日まで。

 ひとつの作品に二重の意味合いを込めた「両義性の作家」とも評されているカプーア。本展では、我々の社会に組み込まれている不可視の監視システムを浮かび上がらせる絵画と立体作品を展示している。レポートはこちら

会期:2023年11月23日〜2024年1月28日
会場:GYRE GALLERY
住所:東京都渋谷区神宮前 5-10-1 GYRE 3F
電話番号:0570-056990
休館日:12月31日、1月1日
料金:無料

DTPが主流となった90年代以降のグラフィックデザインを紐解く。企画展「もじ イメージ Graphic 展」(21_21 DESIGN SIGHT)

展示風景より

 東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTで企画展「もじ イメージ Graphic 展」がスタート。近代のグラフィックデザインを振り返るとともに、主にDTP(Desktop Publishing)が主流となった1990年代以降のデザインを紐解いていくものとなっている。展覧会ディレクターは、室賀清徳(グラフィック社 編集者)、後藤哲也(デザイナー・キュレーター・エディター)、加藤賢策(グラフィックデザイナー・アートディレクター、株式会社ラボラトリーズ代表)。

 本展には国内外約50組のグラフィックデザイナーが参加。会場には、ポスターや書籍、看板の実物展示から、壁面を使った大型出力展示など、多彩な手法で制作されたクリエイション約250点が展示される。漢字や仮名の使い分けや、縦書き、横書きといった特有の表現方法を持ち、文字と図像が混ざりあう日本のグラフィック文化が、グローバルなデジタル情報技術とどう向きあい、何を生み出してきたのか。そして、どのような可能性を見せているのかを、「造形性」「身体性」「メディア」といった13のテーマに分けて紹介するものとなる。レポートはこちら

会期:2023年11月23日〜2024年3月10日
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー 1&2
住所:東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン
電話番号:03-3475-2121 
開館時間:10:00〜19:00 ※入館は18:30まで
休館日:火(ただし12月26日は開館)、年末年始(12月27日〜1月3日) 
料金:一般 1400円 / 大学生 800円 / 高校生 500 円 / 中学生以下無料

トーマス・ヘザウィックによる建築から、奈良美智のパブリック・アート、オラファー・エリアソンによる展示まで。麻布台ヒルズ(東京・虎ノ門)

「オラファー・エリアソン展:相互に繋がりあう瞬間が協和する周期」展示風景より

 森ビルが約300名の権利者と、約35年かけて開発を進めてきた「麻布台ヒルズ」が11月24日に開業。「Modern Urban Village~緑に包まれ、人と人をつなぐ『広場』のような街~」”コンセプトに、「Green & Wellness」”(人々が自然と調和しながら、心身ともに健康で豊かに生きること)を目指す街としてつくられた。オフィス、住宅、商業施設、文化施設、教育機関や医療機関など、様々な都市機能が集積するなかでも、アートの面積はヒルズ全体で9300平米となり、重要な要素となっている。

 トーマス・ヘザウィックによる建築から奈良美智のパブリック・アート、そして麻布台ヒルズギャラリーの開館記念展として「オラファー・エリアソン展:相互に繋がりあう瞬間が協和する周期」が開催されているなど、その見どころは多岐にわたる。足を運ぶ際は、詳細をまとめているこちらの記事をぜひチェックしてほしい。

開業:2023年11月24日〜
会場:麻布台ヒルズ
住所:東京都港区虎ノ門5-8-1 

日本画を通じた情景の旅へ。特別展「日本画聖地巡礼―東山魁夷の京都、奥村土牛の鳴門―」(山種美術館)

展示風景より、左から石田武《四季奥入瀬 秋韻》(個人蔵)、奥田元宋《奥入瀬(秋)》

 日本画家たちが実際に訪れ描いた場所を「聖地」とし、美術館での鑑賞体験を通じて「聖地巡礼」を味わう展覧会「日本画聖地巡礼 ―東山魁夷の京都、奥村土牛の鳴門―」が、東京・広尾の山種美術館で11月26日まで開催されている。

 「聖地巡礼」とは本来宗教上の聖地を訪ね回ることであるが、昨今では小説やドラマ、マンガ、アニメなどの舞台となった場所をファンが訪れることも同様に呼ばれ、その認識は広がりを見せている。

 本展はそのような視点から、山種美術館のコレクションをとらえることで新たな鑑賞体験を提示するとともに、現地の写真や画家のスケッチ、言葉などの資料もあわせて展示。描いた画家の目を借りながら、北海道から沖縄までの様々な「聖地」を体験できるというものだ。レポートはこちら

会期:2023年9月30日〜11月26日
会場:山種美術館
住所:東京都渋谷区広尾3-12-36
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10:00〜17:00 ※入館は16:30まで 
休館日:月
料金:一般 1400円 / 大学生・高校生 1100円 / 中学生以下無料

技術も思想も新たな領域に。特別展「超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA」(三井記念美術館)

展示風景より、青木美歌《あなたと私の間に》(2017)

 東京・日本橋の三井記念美術館で開催中の特別展「超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA」が11月26日に閉幕する。

 本展は、三井記念美術館を皮切りに2014年から15年にかけて全国を巡回した「超絶技巧!明治工芸の粋」展と、17年から19年に全国巡回した「驚異の超絶技巧! 明治工芸から現代アートへ」展に続く「超絶技巧」シリーズの第3弾。本展では、金属、木、陶磁、漆、ガラス、紙など様々な素材を用い、孤独な環境のなか自らに負荷をかけ、アスリートのような鍛錬を実践している現代作家17名の作品、64点が並ぶ。レポートはこちら

会期:2023年9月12日~11月26日
会場:三井記念美術館
住所:東京都中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7階
電話:050-5541-8600
開館時間:10:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月
観覧料:一般 1500円 / 大学・高校生 1000円 / 中学生以下 無料

絵は一対一で対話するように味わうもの。「インド細密画」(府中市美術館)

ヴィシュヌとラクシュミ ラージプト絵画 19世紀中頃

 東京の府中市美術館で開催中の「インド細密画」は11月26日までの会期となっている。

「絵は一対一で対話するように味わうもの」という芸術観のもと、小さな画面に精密な筆で描かれたインド細密画。16世紀後半から19世紀半ばにかけて、ムガル帝国やラージプト諸国の宮廷で楽しまれた一辺20センチほどの小さな絵には、ファンタスティックな神話世界、豪華な衣装に身を包んだ王の肖像や、しなやかなポーズの女性たちなど、美しい線と色に彩られた宝石のような絵が描かれている。そこには、人々の自然を崇める心や感性、情熱的な信仰心が込められており、古代より複雑で深遠な文化を築いてきたインドのすべてが刻まれていると言える。

 本展では、日本画家・インド美術研究家の畠中光享のコレクションから細密画の優品およそ120点を紹介。畠中コレクションは、細密画のなかでもとくにインドらしさが色濃く表れたラージプト絵画が充実した世界有数の個人コレクションとなっている。

会期:2023年9月16日〜11月26日
会場:府中市美術館
住所:東京都府中市浅間町1-3(都立府中の森公園内)
電話番号:050-5541-8600 
開館時間:10:00〜17:00 
休館日:月
料金:一般 900円 / 高校・大学生 450円 / 小・中学生 200円 / 未就学児無料

建築の全体性とは、どこまでのことを指すのか? 西澤徹夫「偶然は用意のあるところに」(TOTOギャラリー・間)

 東京・南青山のTOTOギャラリー・間で、西澤徹夫の個展「偶然は用意のあるところに」が11月26日まで開催されている。

 西澤は、京都市京セラ美術館や八戸市美術館をはじめとする文化施設や美術展の会場構成などを数多く手がける建築家。西澤は「建築の全体性とは、どこまでのことを指すのか?」「建築が扱う対象はどんどんふくらんでいくこと、具象として現れたものの裏側にこそ、私たちが建築と呼ぶものの核心のようなものが内在していること。そのような不可視のものを計画することの過程にこそ建築の魅力があるのではないか」と述べている。

 タイトルの「偶然は用意のあるところに」は、いまだ見えていない核心に触れるためにできうる限りすべての準備を整えておくという、西澤の建築との真摯な向き合い方を表した言葉だと言える。西澤の緻密な設計と現場での限りない「チューニング」の積み重ねによって生まれる建築が、訪れる人に悦びや新しい発見をもたらすだろう。本展では、西澤の建築に対する姿勢とその仕事ぶりを紹介している。

会期:2023年9月14日〜11月26日
会場:TOTOギャラリー・間
住所:東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F
電話番号:03-3402-1010 
開館時間:11:00〜18:00 
休館日:月祝
料金:無料

過去最大規模の個展。「三島喜美代ー遊ぶ 見つめる 創りだす」(岐阜県現代陶芸美術館)

展示風景より

 岐阜県多治見市の岐阜県現代陶芸美術館で、現代美術家・三島喜美代の個展「三島喜美代ー遊ぶ 見つめる 創りだす」が11月26日まで開催中だ。本展は、三島の初期作品から本展のために制作した新作までが揃う、過去最大規模の個展となっている。

 三島喜美代は1932年生まれ。大阪市と多治見市の隣市である岐阜県土岐市を拠点として活動し、陶で雑誌や新聞、ダンボールなどを表現する作品で知られている。当初、油絵からスタートした三島は、1960年代には雑誌や新聞紙を画面に切り貼りしたコラージュの平面作品で注目を集め、その後、新聞を陶に転写する表現に取り組み始める。90歳を超えたいまもなお、廃材やスラグ(ゴミ焼却時に発生する廃棄物)などを素材とした、新たな試みを続けている。

会期:2023年9月16日~11月26日
会場:岐阜県現代陶芸美術館 ギャラリーⅠ・Ⅱ
住所:岐阜県多治見市東町 4-2-5 (セラミックパークMINO内)
電話番号:0572-28-3100
開館時間:10:00~18:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月(祝日の場合は翌平日)
料金:一般 1000円 / 大学生 800円 / 高校生以下 無料

ライアン・ガンダー 「アイムジャストレスティングマイアイズ(ちょっと目を休ませてるだけなんだ)」(福岡醤油ギャラリー)

展覧会場にて、ライアン・ガンダーと《2000年来のコラボレーション(予言者)》(2008)サイズ可変 アニマトロニクス・マウス、オーディオ 公益財団法人石川文化振興財団蔵 Courtesy the artist and Künstlerhaus, Halle für Kunst & Medien, Graz.

 福岡醤油ギャラリーで開催中のライアン・ガンダーによる個展 「アイムジャストレスティングマイアイズ(ちょっと目を休ませてるだけなんだ)」が11月26日に閉幕する。

 ライアン・ガンダーは1976年イギリス生まれ。近年の主な展覧会に、 「われらの時代のサイン」(東京オペラシティアートギャラリー、2022)、 「The 500 Million Year Collaboration」(クンストハレ・ベルン、スイス、2019)、 「この翼は飛ぶためのものではない」(国立国際美術館、大阪、2017)、 「Make every show like itʼs your last」(アスペン美術館、アメリカ、2016)など。また、「第54回ヴェネチアビエンナーレ」「ドクメンタ(13)」「第9回上海ビエンナーレ」「岡山芸術交流2016」などの世界的な国際展にも多数参加。「ドクメンタ(13)」では、メイン会場のひとつであったフリデチアヌム美術館1階のメイン展示室にて、何も展示されていない展示室のなかを吹き抜ける 「風」 を作品としたインスタレーションを発表し、大きな話題となる。

 本展では、同廊石川コレクションの作品と新作を含めた10数点の作品を展示。その大部分は暗闇の展示室のなかで鑑賞できるようになっている。同展におけるガンダーのインタビューはこちら

会期:2023年7月15日〜11月26日
会場:福岡醤油ギャラリー
住所:岡山県岡山市北区弓之町17-35
電話番号:086-235-8020
開館時間:10:00〜17:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月(祝日の場合は翌平日)
料金:1500円 / 小学生以下無料

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