近代のグラフィックデザインの歴史を探りながら、とくにDTP(Desktop P ublishing)と呼ばれる、パソコン上で出版物や印刷物のデータ制作の多くの過程を行うことが主流となった1990年代以降のデザインを、文字とデザインの関係から紐解いていく企画展「もじ イメージ Graphic 展」が東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTで開催される。展覧会ディレクターは、室賀清徳(グラフィック社 編集者)、後藤哲也(デザイナー・キュレーター・エディター)、加藤賢策(グラフィックデザイナー・アートディレクター、株式会社ラボラトリーズ代表)。
本展には国内外約50組のグラフィックデザイナーが参加。会場には、ポスターや書籍、看板の実物展示から、壁面を使った大型出力展示など、多彩な手法で制作されたクリエイション約250点が展示される。漢字や仮名の使い分けや、縦書き、横書きといった特有の表現方法を持ち、文字と図像が混ざりあう日本のグラフィック文化が、グローバルなデジタル情報技術とどう向きあい、何を生み出してきたのか。そして、どのような可能性を見せているのかを、「造形性」「身体性」「メディア」といった13のテーマに分けて紹介するものとなる。
展覧会ディレクターのひとりである室賀は、リリース内で本展の意図を次のように語っている。
「現代のグラフィックデザインは国際的に均質化が進んでいます。世界のだれもが同じアプリケーションを使い、情報整理やそれによる問題解決を低コストで行う。そんなメカニズムがデザインの世界を支配しているようです。
けれども、アートと技術の間で発達してきたデザインには論理では説明できない感性的な側面があります。 また、英語の『グラフィック』や『デザイン』という言葉の根源は、人間が自身を取り巻く世界に対して痕跡を与え、意味を発生させる行為につながっています。
本展ではそのようなはたらきを、20世紀末以降の西洋的なグローバル・デザインの潮流に対する日本の応答のなかに観察します。現代におけるグローバル化は単なる西洋化として説明できるものではなく、さまざまな地域文化の入り混じりや、異文化を翻訳して解釈するダイナミズムのうえに成り立っています。
そのようなダイナミズムのなかで日本のデザインについて考える際、これまでのような『日本の伝統的な美意識』を持ち出すだけでは現代のリアリティに接続できません。そこで注目したいのが文字とデザインの関係です。
日本では漢字、ひらがな、カタカナを併用し、表現のモードに応じて併用する、独自の情報空間を発達させてきました。このような構造は、文字と図像が自在に融合するレイアウトにもつながっています。
文字を横組みで打つことが日常化した時代のなかで、グローバルな情報構造と日本の文字が散らす火花のなかにどのようなデザインの可能性が浮かんでいるのか。ぜひ会場でお確かめください(プレスリリースより抜粋)」。
大量のビジュアル情報が飛び交い、つくり手も受け手も効率性を重視せざるを得ない現代。グリッドといった仕組みを超え、縦横無尽に浮遊する文字やイメージのあり方、それらの結合や合間にたちのぼるエネルギーを感じることで、改めてグラフィックデザイン本来の楽しさや豊かさを発見する機会となるだろう。
参加デザイナーは、明津設計、秋山伸、アドビ、有馬トモユキ、石塚俊、上西祐理、Experimental Jetset、M/M (paris)、大島依提亜、大原大次郎、岡﨑真理子、葛飾出身、上堀内浩平、川谷康久、菊地敦己、北川一成、小池アイ子、 佐々木俊、佐藤可士和、佐藤卓、John Warwicker (Tomato) 、鈴木哲生、Sulki & Min、祖父江慎+ コズフィッシュ、大日本タイポ組合、立花ハジメ、立花文穂、The Designers Republic、投票ポスタープロジェクト、戸田ツトム、中島英樹、仲條正義、永原康史、名久井直子、野田凪、Noritake、服部一成、原研哉、羽良多平吉、BALCOLONY.、平林奈緒美、廣田碧、松田行正、松本弦人、三重野龍、水戸部功、みふねたかし、宮越里子、山田和寛、𠮷田勝信、米山菜津子、寄藤文平、王志弘、ほか。