デザイン業界の端くれに属していると思っている身として周囲の様子を眺めていると、近年、日本国内では国立のデザインミュージアム設立に向けての議論や活動が再び活発になりつつあるように感じている。このムーブメントの先駆けとなったデザイン施設がある。1980年代からデザインミュージアムをつくる必要性をいち早く訴え続けたデザイナーの三宅一生が2003年に朝日新聞に寄稿した記事(「造ろうデザインミュージアム」)が契機となり、07年に東京ミッドタウン内に開館した「21_21 DESIGN SIGHT」だ。
開館以来、この場所ではデザインにまつわる数多くの展覧会を中心に、トークやワークショップなど多角的なプログラムが開催されてきた。13年には「日本のデザインミュージアム実現に向けて展」を開催し、翌14年にはその活動が「デザインの多視点を提示」したとして「2014 毎日デザイン賞特別賞」を受賞している。施設自体は地上1階、地下1階の低層建築で、設計を手がけたのは日本を代表する建築家である安藤忠雄氏。三宅一生氏の服づくりのコンセプトである「一枚の布」に着目した、一枚の鉄板を折り曲げたような屋根が一際印象的だ。また、日本で最長となる複層ガラスを用いるなど、世界屈指の日本の建設技術が集約されている。