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2023.6.2

アーティゾンのABSTRACTION展からヘザウィック、跳躍するつくり手たちまで。今週末に見たい展覧会ベスト12

今週から来週前半にかけて開幕/閉幕する展覧会から、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「若林奮 森のはずれ」(武蔵野美術大学 美術館・図書館)展示風景より
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ひとりの報道写真家の軌跡。「田沼武能 人間讃歌」(東京都写真美術館)

展示風景より

 70年以上写真を通して人間のドラマをとらえ続けてきた日本写真界の巨匠・田沼武能。その逝去後初となる大規模な回顧展「田沼武能 人間讃歌」が東京・恵比寿の東京都写真美術館で開幕した。会期は7月30日まで。レポートはこちらから。

 本展では、「戦後の子どもたち」「人間万歳」「ふるさと武蔵野」の全3章で会場が構成されており、約200点の写真作品を展示。人間のドラマをとらえ続けてきた田沼の70年を超える写真家としての軌跡をたどるものとなる。とくに注目したいのが、美術館では初公開となる最新作「武蔵野」シリーズだ。東浅草という都会に生まれ、いわゆる「ふるさと」に憧れたという田沼がその原風景を武蔵野に見出し、撮影したものは必見。

会期:2023年6月2日〜7月30日
会場:東京都写真美術館 地下1階展示室
住所:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
電話番号:03-3280-0099
開館時間:10:00〜18:00(金土〜20:00)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月 
料金:一般 700円 / 学生 560円 / 中高生・65歳以上 350円

山水画の奥深き世界へ。特別展「木島櫻谷─山水夢中」(泉屋博古館東京)

展示風景より、《寒月》(展示期間:6月18日まで)

 近代の京都画壇を代表する存在として近年再評価が進む日本画家・木島櫻谷(このしま・おうこく、1877~1938)。その特別展「木島櫻谷─山水夢中」が、東京・六本木の泉屋博古館東京で6月3日に開幕する。

 櫻谷は明治後半から昭和前期まで、文展帝展で活躍した京都日本画壇の代表的存在。京都画壇の重鎮・今尾景年(1845~1924)に写生を学び、徹底した写生を基礎に、卓越した技術と独自の感性によって叙情的で気品ある画風の作品を数多く生み出した。京都の伝統を継承しながら、西洋画の要素をも取り入れたスタイルが大きな特徴だ。とりわけ親しみやすい動物画で知られる櫻谷だが、山水画も生涯描き続けていた。本展は、その櫻谷の山水画に着目した展覧会となっている。

会期:2023年6月3日〜7月23日(前期6月3日〜25日、後期6月27日〜7月23日)
会場:泉屋博古館東京
住所:東京都港区六本木1-5-1
電話番号:050-5541-8600 
開館時間:11:00〜18:00(金〜19:00) ※入館は閉館の30分前まで 
休館日:月(7月17日は開館)、7月18日 
料金:一般 1200円 / 高校・大学生 800円 / 中学生以下無料

新版画全162点を展示。 「ポール・ジャクレー フランス人が挑んだ新版画」(太田記念美術館)

ポール・ジャクレー オロール島の少年、東カロリン 個人蔵
©︎ ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2023 E5060 前期展示

 太田記念美術館で 「ポール・ジャクレー フランス人が挑んだ新版画」がt6月3日に開幕する。

 ポール・ジャクレー(1896~1960)はフランス・パリに生まれ、3歳で来日してから、64歳で亡くなるまで日本で過ごした。38歳の頃からは、南洋やアジアで暮らす人々を描いた木版画を続々と刊行した。昭和前期は絵師、彫師、摺師の協同作業による 「新版画」が盛んとなった時期だが、様々な国の老若男女が暮らす姿を鮮やかな色彩で描いたジャクレーの作品は、当時の新版画のなかでも異彩を放つ。本展では、ジャクレーが挑んだ新版画全162点を前期、後期に分けて展示。ジャクレーのすべての作品が紹介されるのは、首都圏では初となる。

会期:2023年6月3日~7月26日
会場:太田記念美術館
住所:東京都渋谷区神宮前1-10-10
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:30~17:30 ※入館は閉館30分前まで
休館日:月(7月17日は開館)、6月29日〜6月30日(展示替え)、7月18日
料金:一般 1000円 / 大学・高校生 700円 / 中学生以下 無料

メディア・アートの歴史を理解するうえで欠かせないアーティスト。「DARA BIRNBAUM (ダラ バーンバウム)」(プラダ青山店)

ダラ・バーンバウム Kiss the Girls: Make Them Cry 1979
Courtesy of the artist and Marian Goodman Gallery
©︎Dara Birnbaum

 ヘルツォーク&ド・ムーロンが設計した象徴的な建築、プラダ青山店。その5階において、プラダ財団の支援を得て企画された展覧会「DARA BIRNBAUM (ダラ バーンバウム)」が始まっている。

 ダラ・バーンバウムは1946年ニューヨーク生まれ。現在も同地を拠点に活動している。バーンバウムは、大判写真や彫刻、建築的構成部分といった三次元的なデザイン要素を作品に取り入れながら、様々なソースの画像を対比させる、複雑で革新的なインスタレーションを制作した最初のアーティストのひとり。画期的な制作手法と手を加えたテレビの映像を使用することで知られており、メディア・アートの歴史を理解するうえで欠かせないアーティストだ。本展は、ニューヨーク近代美術館で長年キュレーターを務めたバーバラ・ロンドンがキュレーションするもの。1979年から2011年までの間に制作された4作品が並ぶ。

会期:2023年6月1日~8月28日
会場:プラダ青山店5階
住所:東京都港区南青山5-2-6
開館時間:プラダ青山店に準ずる 
休館日:プラダ青山店に準ずる 
料金:無料

約30年ぶりに展示。「若林奮 森のはずれ」(武蔵野美術大学 美術館・図書館)

展示風景より、《所有・雰囲気・振動—森のはずれ》(1981-84)

 武蔵野美術大学 美術館・図書館で展覧会「若林奮 森のはずれ」が6月1日に開幕した。

 自身と周縁世界との関わりをめぐる思索を内包した作品により、戦後日本の彫刻を牽引した若林奮(1936〜2003)は、1975年から84年まで同大で教鞭を執っていた。本展では本学在任中、工房内10畳ほどの空間に建てた通称「鉄の部屋」が元となる《所有・雰囲気・振動̶森のはずれ》(1981‒84)を約30年ぶりに展示。また《Daisy I》(1993)全10点を一堂に展観し、若林彫刻の核ともいえる「自然」をめぐる諸相について読み解くものとなる。

会期:2023年6月1日〜8月13日
会場:武蔵野美術大学 美術館・図書館
住所:東京都小平市小川町1-736
開館時間:11:00〜19:00(土日祝10:00〜17:00)
休館日:水
料金:無料

抽象絵画の起源と展開を紹介。「ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌ、フォーヴィスム、キュビスムから現代へ」(アーティゾン美術館)

展示風景より

 アーティゾン美術館で「ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌ、フォーヴィスム、キュビスムから現代へ」が6月3日に開幕する。

 本展は、国内外から集結した約250点によって抽象絵画の起源と展開を紹介する大規模展。会場では、印象派を起点とした抽象絵画の発生と興隆から、抽象表現主義、日本の実験工房や具体なども含めた、抽象絵画のあゆみが展覧される。出品作には、同館の前身であるブリヂストン美術館が休館した2015年以降に新たに収蔵された作品のうち、ヴァシリー・カンディンスキーやパウル・クレー、フランティセック・クプカの初期作品など95点が含まれる。

会期:2023年6月3日~8月20日
会場:アーティゾン美術館
住所:東京都中央区京橋1-7-2
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00~18:00(金〜20:00 ※ただし、8月11日を除く) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし、7月17日は開館)、7月18日
料金:一般 1800円(日時指定予約制、当日チケット[窓口販売]2000円) / 学生 無料(要ウェブ予約)

「許家維+張碩尹+鄭先喻 浪のしたにも都のさぶらふぞ」(山口情報芸術センター[YCAM])

 山口情報芸術センター[YCAM]で 6月3日より、「許家維+張碩尹+鄭先喻 浪のしたにも都のさぶらふぞ」が開催される。

撮影:山中慎太郎(Qsyum!)

 本展は台湾を拠点に活躍する許家維(シュウ・ジャウェイ)、張碩尹(チャン・ティントン)、鄭先喻(チェン・シェンユゥ)の新作を発表する展覧会。3人は、近年、共同で日本統治時代の台湾における砂糖産業を起点に台湾と日本の歴史的関係や近代化の記憶をたどるプロジェクトを行っている。本展では、このプロジェクトに連なる新作を発表する。

会期:2023年6月3日~9月3日
会場:山口情報芸術センター[YCAM]
住所:山口県山口市中園町7-7
電話番号:083-901-2222
開館時間10:00~19:00
休館日:火
料金:無料

パトリシア・フィールドのコレクションを紹介「ハウス・オブ・フィールド 展」(中村キース・へリング美術館)

展示風景より

 中村キース・ヘリング美術館で、パトリシア・フィールドのコレクションを紹介する「ハウス・オブ・フィールド」展が6月3日にスタートする。

 パトリシア・フィールドはニューヨーク生まれ。映画『プラダを着た悪魔(2006)、米テレビドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』(1998-2004)で、アカデミー賞衣装デザイン賞ノミネート、エミー賞衣装賞を受賞。衣裳デザイナーおよびスタイリストとして活躍してきたいっぽうで、作品を購入することでアーティストたちを支えるという一面もあった。

 本展では、半世紀をかけて集められたアート・コレクションをティナ・ポールの写真とともに紹介。日本初公開作品を含むペインティングや写真、オブジェなど約130点に加えて、1980年代中期のブティック「パトリシア・フィールド」の記録映像やブティックの再現インスタレーションも展示される。

会期:2023年6月3日〜2024年5月6日
会場:中村キース・ヘリング美術館
住所:山梨県北杜市小淵沢町10249-7
開館時間:9:00〜17:00 ※入館は16:30まで 
休館日:定期休館日なし ※展示替え・メンテナンス等のため臨時休館する場合あり
料金:大人 1500円 / 16歳以上の学生 800円 / 障がい者手帳をお持ちの方 600円 / 15歳以下 無料

「人間味のある建物」とは何か? 「ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築」(東京シティビュー)

「ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築」の展示風景より、《上海万博英国館》(2010)の模型展示

 世界が注目するデザイン集団、ヘザウィック・スタジオの主要プロジェクトを日本で初めて紹介する企画展「ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築」が、六本木ヒルズ森タワーの東京シティビューで6月4日に閉幕する。トーマス・ヘザウィックのインタビューはこちら

 本展は、試行錯誤を重ねながらアイデアを実現する同スタジオの仕事を「ひとつになる」「みんなとつながる」「彫刻的空間を体感する」「都市空間で自然を感じる」「記憶を未来へつなげる」「遊ぶ、使う」の6つの視点で構成。人々の心を動かす優しさ、美しさ、知的興奮、そして共感をもたらす建築とは何かを考えるきっかけとなるだろう。

会期:2023年3月17日〜6月4日
会場:東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)
住所:東京都港区六本木6-10-1
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00〜22:00 ※入館は21:00まで
休館日:会期中無休
料金:[当日] 一般 2000円(2200円) / 高校・大学生 1400円(1500円) / 4歳〜中学生 800円(900円) / 65歳以上 1700円(1900円) ※()内は土日祝価格

毎年恒例。「建物公開2023 邸宅の記憶」(東京都庭園美術館)

本館(旧朝香宮邸)での展示風景より、ウィンターガーデン

 東京都庭園美術館で年に一度開催されている建物公開展。今年は、「邸宅の記憶」をテーマに、邸宅の主であった朝香宮家の人々に焦点を当て、宮邸時代の家具や調度を用いた邸宅空間を再現した展示が6月4日まで開催中だ。

 宮内省内匠寮が設計し、主要な部屋の内装をフランスの室内装飾家アンリ・ラパンが担当した東京都庭園美術館の本館(旧朝香宮邸)。本展では、ラパンに加え、アール・デコ期を代表する作家であるルネ・ラリックやレイモン・シュブらの作品も採用されたアール・デコの空間を味わいながら、かつてこの空間を往来した人々が残した写真や映像資料、工芸品、調度品、衣装などを通じ、当時の生活の一端を垣間見ることができる。また、新館では皇室ゆかりのボンボニエール300点以上を展示。こちらも見応え抜群だ。レポートはこちら

会期:2023年4月1日〜6月4日
会場:東京都庭園美術館
住所:東京都港区白金台5-21-9
開館時間:10:00〜18:00(4月1日〜20:00) ※入館は閉館の30分前まで 
休館日:月 
料金:一般 1000円 / 大学生(専修・各種専門学校含む)800円 / 中・高校生および65歳以上 500円

「人間こそがなしうるもの」を問う。「跳躍するつくり手たち:人と自然の未来を見つめるアート、デザイン、テクノロジー」(京都市京セラ美術館)

展示風景より、TAKT PROJECT《glow ⇄ grow: globe》(2023)

 環境問題やテクノロジーの進歩など、現代社会において「人間こそがなしうるもの」をあらためて問う特別展「跳躍するつくり手たち:人と自然の未来を見つめるアート、デザイン、テクノロジー」が京都市京セラ美術館で6月4日に閉幕する。

 本展の企画・監修はデザインジャーナリストの川上典李⼦。展示には日本のアート、デザイン分野の気鋭作家20名(グループ)が参加し、過去と未来、自然と人⼯、情報環境と実社会といった様々な関係性を接続、再解釈する試みを見せる。レポート記事はこちらから。

会期:2023年3月9日〜6月4日
会場:京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ
住所:京都府京都市左京区岡崎円勝寺町124
電話番号:075-275-4271 
開館時間:10:00~18:00 ※最終入場は17:30
休館日:月(祝日の場合は開館)
料金:一般 1800円 / ⼤学・専門学校生 1500円 / 高校・中学生 1100円 / 小学生 600円 / 未就学児無料

「声」に向き合う展覧会。百瀬文「口を寄せる」(十和田市現代美術館)

展示風景より、《Here》(2016)

 十和田市現代美術館の百瀬文の個展「口を寄せる」が6月4日に閉幕する。百瀬は1988年東京都生まれ。2013年武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻油絵コース修了。主に映像作品を手がけ、他者とのコミュニケーションのなかで生じる不均衡をテーマに身体・ セクシュアリティ・ジェンダーをめぐる問題を追究してきた。

 本展では、女性声優をテーマにした新作サウンド・インスタレーション《声優のためのエチュード》を発表。また、耳の聞こえない女性と耳の聞こえる男性とのふれ合いに生じるすれ違いが映し出される《Social Dance》や、百瀬の父が娘に書いた173問の質問項目に口頭で答えていくなかで、その回答が父親の意志から離れていく《定点観測(父の場合)》など、性別や世代の異なる他者との関係やその背後にある見えない存在や抑圧が映し出された作品も展覧される。レポートはこちら。インタビューはこちら

会期:2022年12月10日~2023年6月4日
会場:十和田市現代美術館
住所:青森県十和田市西二番町10-9
電話番号:0176-20-1127
開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月(祝日の場合は翌火)、年末年始
料金:1800円(常設展込み) /  高校生以下無料