「跳躍するつくり手たち」からアートフェア東京まで。今週末に見たい展覧会ベスト9

今週開幕/閉幕する展覧会から、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

展示風景より、岩崎貴宏《Out of Disorder(Layer and Folding)》(2018)、《アントロポセン》(2023) 作家蔵

「人間こそがなしうるもの」を問う。「跳躍するつくり手たち:人と自然の未来を見つめるアート、デザイン、テクノロジー」

展示風景より、TAKT PROJECT《glow ⇄ grow: globe》(2023)

 環境問題やテクノロジーの進歩など、現代社会において「人間こそがなしうるもの」をあらためて問う特別展「跳躍するつくり手たち:人と自然の未来を見つめるアート、デザイン、テクノロジー」が京都市京セラ美術館で開幕した。

 本展の企画・監修はデザインジャーナリストの川上典李⼦。展示には日本のアート、デザイン分野の気鋭作家20名(グループ)が参加し、過去と未来、自然と人⼯、情報環境と実社会といった様々な関係性を接続、再解釈する試みを見せる。レポート記事はこちらから。

会期:2023年3月9日〜6月4日
会場:京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ
住所:京都府京都市左京区岡崎円勝寺町124
電話番号:075-275-4271 
開館時間:10:00~18:00 ※最終入場は17:30
休館日:月(祝日の場合は開館)
料金:一般 1800円 / ⼤学・専門学校生 1500円 / 高校・中学生 1100円 / 小学生 600円 / 未就学児無料

《猫の教室》を初公開。「藤田嗣治 猫と少女の部屋」

「猫と少女の部屋」の展示風景より、左が《猫の教室》(1949)

 昨年オープンした長野・軽井沢にある軽井沢安東美術館で、開館記念展に続く展覧会「藤田嗣治  猫と少女の部屋」が開催中だ。

 安東泰志と恵の夫妻が約20年にわたり蒐集してきた藤田作品約200点のなかから、様々な作品を公開する同館。「藤田嗣治  猫と少女の部屋」はそのなかでも夫婦が藤田に魅せられる契機となった、猫や少女を描いた作品群に焦点を当てたもの。なかでも《猫の教室》(1949)は、敗戦後に戦争責任を問われた藤田がニューヨークを経由してフランスに戻る途中、ニューヨーク滞在中に描いた作品で、今回が初公開となる。レポートはこちらから。

会期:2023年3月3日〜9月12日
会場:軽井沢安東美術館
住所:長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢東43-10
電話番号:0267-42-1230 
開館時間:10:00〜17:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:水(祝日の場合は翌平日))
料金:一般 2300円 / 高校生以下 1100 円 / 未就学児無料

「伽藍面」の寺宝、ズラリ。特別展「東福寺」

展示風景より、吉山明兆《五百羅漢図》(1386)の一部

 紅葉で知られる京都の名刹・東福寺。この寺宝を初めて本格的に紹介する特別展が、東京国立博物館で始まった。

 本展では、14年という長期間の修理事業を終えた絵仏師・明兆(みんちょう、1351〜1432)による《五百羅漢図》を、修理後初めて公開(展示替えあり)。また縦326.1センチにもおよぶ圧倒的な《白衣観音図》(展示期間:4月11日〜5月7日)や、円熟期の優品である流麗な描線が特徴的な《達磨・蝦蟇鉄拐図(だるま・がまてっかいず》など、見応えある作品が勢揃いしている。レポート記事はこちらから。

会期:2023年3月7日~5月7日
会場:東京国立博物館
住所: 東京都台東区上野公園13-9
開館時間:9:30〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(3月27日と5月1日は開館)
料金:一般 2100円 / 大学生 1300円 / 高校生 900円 / 中学生以下無料

『聆涛閣集古帖』を立体的に展示。「いにしえが、好きっ!-近世好古図録の文化誌-」

展示風景より、国宝《線刻釈迦三尊等鏡像》(平安時代、泉屋博古館蔵)

 国立歴史民俗博物館が所蔵する、江戸後期に編纂された『聆涛閣集古帖(れいとうかくしゅうこちょう)』は、兵庫県の神戸・住吉の豪商だった吉田家が三代にわたり編纂した、考古資料、文書・典籍、美術工芸品など約2400件が精緻な筆致で描かれている「図録」や「カタログ」に当たるものだ。

 本展は、この『聆涛閣集古帖』に描かれた古器物が「いまどうなっているのか」という観点で、その原品や複製・模造品等を集めて立体的に展示し、二次元で描かれていたその世界を三次元に再現することを目指すもの。国宝《線刻釈迦三尊等鏡像》をはじめ、様々な銘品が並ぶ。レポート記事はこちらから。

会期:2023年3月7日~5月7日
会場:国立歴史民俗博物館
住所:千葉県佐倉市城内町117
電話番号: 043-486-0123 
開館時間:9:30~17:00 
休館日:月(5月1日は開館) 
料金:一般 1000円 / 大学生 500円

日本最大のアートフェア。「アートフェア東京 20223」

会場風景より

 17回目となる日本最大級のアート見本市「アートフェア東京2023」が開幕した。会場は東京国際フォーラム。

 今年のテーマは「変動」。出店者総数は144で、海外からは上海のギャラリー「Pearl Lam Galleries」、イラン・テヘランをベースに活動する「SARAI Gallery (SARADIPOUR)」、ロンドンをベースにする「Unit London」、台湾を拠点とする「YIRI ARTS」、香港やロサンゼルスを拠点とする「OVER THE INFLUENCE」などが参加。また、国内からは「西村画廊」が9年ぶり、「カイカイキキギャラリー」が15年ぶり、「一番星画廊」が12年ぶりの参加となる。

会期:2023年3月10日〜12日
会場:東京国際フォーラム ホールE/ロビーギャラリー
住所:東京都千代田区丸の内3-5-1
開館時間:11:00〜19:00(12日〜16:00)
料金:当日チケット 5000円 / 予約チケット 4000円

The Flavour of Power(ザ・フレーバー・オブ・パワー)

メインビジュアル :STUDIO PT.

 山口情報芸術センター[YCAM]で、研究開発プロジェクト「食と倫理リサー チ・プロジェクト」の成果発表展「The Flavour of Power(ザ・フレーバー・オブ・パワー)─紛争、 政治、倫理、歴史を通して食をどう捉えるか?」が開幕する。

 本展は、同プロジェクトで共同調査をしてきた、インドネシアを拠点とする8人組アーティスト集団のバクダパン・フード・スタディ・グループよる日本初個展。会場では、太平洋戦争中の日本とインドネシアの食における関わりや、農作物の遺伝子改変や単一作物の生産への依存(モノカルチャー)などのテーマや課題を取り上げ、そのリサーチの成果を映像インスタレーション、カードゲーム、資料展示として発表する。

会期:2023年3月11日~6月25日
会場:山口情報芸術センター[YCAM]2階ギャラリー、スタジオB
住所:山口県山口市中園町7-7
電話番号:083-901-2222
開館時間:10:00~19:00
休館日:火
料金:無料

ジェンダーギャップを考える契機に。「ゲリラガールズ  『F』ワードの再解釈:フェミニズム!」

  渋谷PARCOで、アート界のジェンダーギャップに抗うアクティビスト集団「Guerrilla Girls(ゲリラ・ガールズ)」の個展が3月12日まで開催されている。

 ゲリラ・ガールズは1985年にニューヨークで結成され、現在までに55名以上が匿名で参加。「『F』ワードの再解釈:フェミニズム!」をモットーに、公共の場ではゴリラのマスクを着用し、事実と皮肉、ユーモアとインパクトのあるヴィジュアルを交えた表現を続けてきた。本展は、セレクトブティック「Sister」が主催し、日本でのゲリラガールズの初個展を開催した倉敷芸術科学大学・川上幸之介研究室協力のもと実現。

 会場では、ゲリラ・ガールズの作品展示に加えて、グッズの販売、三重県九鬼町にある書店「トンガ坂文庫」から届いたジェンダー関連書籍も販売。グッズの売上の一部はゲリラ・ガールズの活動して寄付されるほか、図書館への書籍寄贈も実施される。

会期:2023年3月3日~3月12日
会場:渋谷PARCO 1階
住所:東京都渋谷区宇田川町15-1
開館時間:11:00~21:00
料金:無料

プラモデルと木彫のコラージュ。「加藤泉一寄生するプラモデル」

展示風景より

 ワタリウム美術館で、加藤泉の個展「寄生するプラモデル」が3月12日まで開催中だ。

 加藤は1969年島根県⽣まれ。90年代末より画家として本格的にキャリアをスタートさせる。子供が描くようなシンプルな記号的な顔のかたちに始まり、現在まで人がたを手がかりに展開。2000年代から木彫作品を発表し、現在は、ソフトビニール、石、布、プラモデルなど幅広い素材を使い制作している。本展では、ビンテージプラモデルを木彫にコラージュしたシリーズを展示。最上階に並ぶプラモデルの箱は圧巻だ。

会期:2022年11月6日~2023年3月12日
会場:ワタリウム美術館
住所:東京都渋谷区神宮前3-7-6
電話番号:03-3402-3001
開館時間11:00~19:00
休館日:月
料金:一般 1200円 / 学生(25歳以下)・高校生・70歳以上 1000円 / 小・中学生 500円

古美術展示の「完成形」。「杉本博司-春日神霊の御生 御蓋山そして江之浦」

展示風景より、杉本博司《春日大宮暁図屏風》(2022)

 春日若宮式年造替奉祝として、春日大社 国宝殿で特別展で開催中の「杉本博司-春日神霊の御生(みあれ) 御蓋山そして江之浦」 が3月13日で閉幕する。

 日本の仏教美術、神道美術に深い関心を持ち、自らも収集してきた現代美術作家の杉本博司は、美術品のなかに自身の眼で新たな美を見出し、その美と精神を作品化している。なかでも、春日大社に派生する美術への関心は群を抜いており、その美の神髄である春日明神への崇敬から、杉本は22年3月には春日大社から御祭神を勧請し、江之浦測候所(神奈川)に「甘橘山 春日社」を創建するに至った。

 本展は杉本自らの監修により、春日信仰・春日若宮信仰の名品を公開するほか、春日をテーマとした屏風の大作も初公開。杉本自ら、古美術展示の「完成形」とまで語る展示をお見逃しなく。レポート記事はこちらから。

会期:2022年12月23日~2023年3月13日
会場:春日大社国宝殿
住所:奈良県奈良市春日野町160
電話番号:0742-22-7788
開館時間:10:00〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで
料金:一般 1000円 / 大学生・高校生 600円 / 小・中学生 400円

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