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「世界の美しい図書館」にはこんな本もあった。多摩美の図書館から届いたブックリスト

全国の美大図書館司書による選書を紹介する「美大図書館の書架をのぞく」シリーズは、アートをもっと知りたい、アートも本も大好きという読者に向けた連載企画。第1回目の今回は、「世界の美しい図書館」としても知られる多摩美術大学図書館におすすめの本を聞いた。

多摩美術大学図書館(八王子キャンパス)外観撮影=望月花妃

 全国の美大図書館の司書から届いた選書で構成される「美大図書館の書架をのぞく」シリーズ。アートをもっと知りたい、アートも本も好きな読者に向けた新連載の第1回目となる今回は、東京五美術大学のひとつでもある多摩美術大学にフォーカスする。

多摩美術大学図書館(八王子キャンパス)内観
提供=多摩美術大学図書館

 多摩美術大学は、1935年に東京都世田谷区上野毛に創設された多摩帝国美術学校を母体とする美術大学。現在は上野毛と八王子にキャンパスを構えており、「自由と意力」という教育理念のもと、ファインアートから舞台芸術まで幅広く学ぶことのできる環境が整っている。

 それぞれのキャンパスに図書館をもち、自然豊かな八王子キャンパス内にある伊東豊雄設計の図書館は、「世界の美しい図書館」として紹介されることも多い。館長・安藤礼二も同館の紹介にあたって次の通りコメントしている。

 多摩美術大学図書館は、美術大学の図書館ならではの蔵書が揃っています。美術書に関しては他の図書館の追随を許さないはずです。また、書物自体に芸術表現の可能性を見出した、作品としての書物も系統的に集めています。今後も、新たな時代の美術大学にふさわしい、新たな表現分野の書物――それらは従来の書物の形をとらないイメージや情報の可能性もあります――を積極的に収集し、広く活用していきたいと考えています。それらを収蔵する図書館自体が、伊東豊雄先生の設計による建築、世界に誇る芸術作品であることも大きな特色です。  

 そんな多摩美術大学の図書館にはどのような本があるのか、多摩美の学生はどんな本を読んでいるのか。同館司書による選書をコメントとともにご紹介する

アート入門にぴったりな本

スージー・ホッジ『5歳の子どもにできそうでできないアート : 現代美術100の読み解き』

スージー・ホッジ『5歳の子どもにできそうでできないアート : 現代美術100の読み解き』(東京美術、2017年)

 アート初心者の多くが、現代アートといわれる作品を見て「これ、子供でもつくれそう……」と思ってしまった経験があるのではないでしょうか。では逆に、なぜ子どもにはできないのかということがわかれば、作品の面白さが理解できるかもしれません。

  本書は現代の100の作品を採り上げ、基本的な情報に加えて 「なぜ5歳の子どもにつくることができないのか」を解説。作者の意図や複雑な手法、制作背景を知ることで、現代アートの奥深さに触れることができます。

つくる人向けの本

深澤直人『ふつう』

深澤直人『ふつう』(D&Department Project、2020年)

 世界的なプロダクトデザイナーである深澤直人。彼がデザインをするときに絶え間なく考え、目指しているもの「ふつう」。分かりにくい概念ですが、生活の中にある身近なものや体験を通して語られる「ふつう」には、ものづくりをされるみなさんがデザインをするときのヒントがぎゅっと詰まっているのではないでしょうか。

 著者の思考の癖を垣間見られる本書は、デザイン書でありながら、哲学書のようでもあります。表紙には淡い水色の平織りの綿布が使われており、手に取ったときの感触もぜひ楽しんでいただきたいです。

「いま、読んでほしい」本

徳井直生『創るためのAI : 機械と創造性のはてしない物語』

徳井直生『創るためのAI : 機械と創造性のはてしない物語』(ビー・エヌ・エヌ、2021年)

 「AIと人」はもう何年も前から話題になることの多いテーマですが、とくに最近SNS上では「AIに描かせた絵」というのを頻繁に目にするようになりました。いつのまにか、すっかり一般化してきたAIを使って誰でも絵を描くことができる時代に、創作する人とAIはどのような関係を築いていけるのか。

 本書はAIのもつ「創造性」について、多様な例を挙げながらAI初心者にもわかりやすく説明しています。単なる道具を超え、AIが生み出す「違和感」や人に与える「驚き」に注目してみることで、人の創作活動そのものをも見つめ直すきっかけになる一冊です。 

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