アーティスト・渡辺志桜里の企画・キュレーションで実施される、最古の能の演目「翁」をベースとする展覧会「とうとうたらりたらりらたらりあがりららりとう」が、「新宿歌舞伎町能舞台」で開催される。会期は11月18日〜11月27日。
企画・キュレーションを務める渡辺志桜里は、1984年東京都生まれ。皇居の周辺で育ち、これまで独自の生態系やジェンダー的視点による天皇制など、リサーチに基づいた作品を制作してきた。代表作には、2019年のデビューから21年の初個展「ベベ」(WHITEHOUSE、東京)、そして現在に至るまで様々なかたちで展示されてきた《サンルーム》がある。また今年に入ってからは、第7回「Women to Watch」出展候補のアーティストにも選出されている。
本展の主催はSmappa!GroupとStudio Ghosth。さらに、コキュレーターには卯城竜太と大舘奈津子(一色事務所)を迎える。
展示タイトルの「とうとうたらりたらりらたらりあがりららりとう」は、能の演目「翁」の冒頭にある謡に由来するもの。
本展は、「存在そのもの全て」だとされ神性を体現する存在の『翁』と、人間以外の存在である「人外」が語る能に着目。民俗学、文学、絵画、芸能または歴史などの蓄積と視点を生かして、人類を自然と同等に扱い、精霊や生物、無機物、言葉、所作をつなぐ生態系を紐解くことで、「エコロジー」の概念と新たな自然観を探るという。
参加作家は、飴屋法水たち、石牟礼道子、エヴァ & フランコ・マテス、コラクリット・アルナーノンチャイ、小宮花店、小宮りさ麻吏奈、ザ・ルートビアジャーニー、動物堂、ピエール・ユイグ、ミセスユキ、渡辺志桜里。文筆家や演出家、ペットショップや花屋に出自を持つアーティストなど、多様な分野の表現者が集まっている。
今回の展示に際して、当初天皇に関係する新作能の制作と、それを通した公害病と「チッソ」の考察を試みていたという渡辺。リサーチを進めるうちに、「そういえば『翁』という文字の中には、『公』が冠としてあるではないか」と、天皇が公共そのものでありながら公共と環境をつなぐ「生態系」という側面を持っていることに気づいてから、実際の展示のかたちに近づいたという。
繁華街の中心に位置する「新宿歌舞伎町能舞台」、そして来場者だけに明かされる秘密の第二会場、それぞれの展示空間に誰のどのような作品が存在しているのか、訪れてぜひその目で確かめてほしい。
なお、10日間の会期中には、編集された能だ『翁』と『不知火』(作・石牟礼道子作)の謡とレクチャーによる公演も予定されている。そのほか、文化人類学者や学芸員とのトークイベントも複数回予定されており、現代と歴史、実戦と言論の双方から思考を深めるプログラムが展開されるという。詳細は公式サイトをチェック。