奈良美智展から考える地域とアートの関係性。「もしもし、奈良さんの展覧会はできませんか?」開催へ

青森県弘前市でこれまで3度にわたって行われた奈良美智展。それらを振り返る展覧会「『もしもし、奈良さんの展覧会はできませんか?』奈良美智展弘前 2002-2006 ドキュメント展」が、弘前れんが倉庫美術館で開催される。会期は9月17日〜2023年3月21日。

「YOSHIITOMO NARA + A to Z」展示風景(2006) (C)Yoshitomo Nara 撮影=永野雅子

 青森県弘前市で過去3回開催された奈良美智展。これらを振り返りながら、地域のアートプロジェクトや美術館について考察する展覧会「『もしもし、奈良さんの展覧会はできませんか?』奈良美智展弘前 2002-2006 ドキュメント展」が、弘前れんが倉庫美術館で開催される。会期は9月17日〜2023年3月21日。

 1959年弘前市に生まれた奈良は、1988年にドイツへと渡り、国立デュッセルドルフ芸術アカデミーに入学。修了後、2000年に帰国した。その翌年から国内初の本格的個展「I DON'T MIND, IF YOU FORGET ME.」を全国巡回展として開催し、2002年には弘前れんが倉庫美術館の前身である煉瓦倉庫がその会場となった。

「I DON’T MIND, IF YOU FORGET ME.」展示風景(2002) 撮影=永野雅子

 以降、奈良は2度の個展(「From the Depth of My Drawer」(2005)、「YOSHITOMO NARA+graf A to Z」(2006))を煉瓦倉庫で開催しており、この展覧会開催が、現在の弘前れんが倉庫美術館を開館させる契機となった(現在、同館エントランスにある《A to Z Memorial Dog》は「YOSHITOMO NARA+graf A to Z」に関わった市民への感謝の気持として制作されたもので、2007年に弘前市に寄贈された)。

奈良美智 A to Z Memorial Dog 2007 (C)Yoshitomo Nara Photo by Naoya Hatakeyama

 煉瓦倉庫での最初の個展から20年となる今年開催される本展は、当時の煉瓦倉庫のオーナーだった吉井千代子(吉井酒造株式会社社長)が、奈良の作品を自分の倉庫で展示したいとギャラリーに問い合わせたエピソードにちなむもの。この電話が吉井と奈良の出会いにつながり、奈良美智展が実現したという経緯がある。

「YOSHITOMO NARA + graf A to Z」会場外観(2006) 撮影=細川葉子

 本展は、こうした過去3度行われた展覧会を多角的に振り返るもの。当時の関係者へのインタビュー映像のほか、市民の協力で集まった印刷物やグッズなどの資料を展示。3回の展覧会の準備から完成までの軌跡をたどるとともに、展覧会運営を担ったボランティアを起点とした持続的なコミュニティのあり方など、異なる切り口から展覧会の要素を考察するという。

 また展覧会準備の様子や展示風景を撮影した写真家・永野雅子と細川葉子による写真のほか、過去に出展された奈良作品の一部(絵画、ドローイング、立体など)も展示される。

 なお、弘前れんが倉庫美術館が開館以来行っている弘前ゆかりのアーティストらに注目する「弘前エクスチェンジ」プログラムでも奈良美智展にフォーカス。3度の奈良展を知る関係者やボランティアへのインタビューをはじめ、参加型の演劇プロジェクト「もしもし演劇部」などを通して、地域の人々が持つ当時の記憶や思い出をリサーチ・記録する試みとなる。

「From the Depth of My Drawer」準備中の様子(2005) 撮影=永野雅子
「YOSHITOMO NARA + graf A to Z」準備中の様子(2006) 撮影=細川葉子

編集部

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