19世紀の終わりごろから出現し始め、現実世界における具体的な対象を写しとらず、その表層の下に隠れた世界の本質を表現しようとする新しい動向である「抽象芸術」。その抽象芸術に対して女性アーティストの貢献に注目する展覧会「Elles font l'abstraction(彼女たちは抽象芸術をつくる)」が、2021年5月5日からパリのポンピドゥー・センターで開催される。
展覧会の企画やアーティストの選定は、ポンピドゥー・センターのチーフキュレーターであるクリスティン・マセルが率いるプロジェクトチームが数年にわたる調査を行った結果。マセルによると、抽象芸術をテーマにした展覧会では、その様々な形態や表現の発展に女性アーティストが果たした基本的な役割を過小評価することが多いという。
本展では、106人の女性アーティストが1860年代〜1980年代のあいだに制作した500点以上の抽象芸術作品を展示。ロシアの先駆的な抽象芸術から、抽象表現主義、ミニマリズム、フェミニストの発展、抽象芸術のグローバル化など、美術史において女性アーティストたちが抽象芸術の発展に果たした貢献を振り返る。
また、ヒルマ・アフ・クリント、ジョアン・ミッチェル、ジュディ・シカゴ、ルイーズ・ブルジョワなどの主要アーティストだけでなく、ラテンアメリカや中東、アジア出身の女性アーティストによるダンス、装飾美術、写真、映画、パフォーマンスなど、様々な媒体の抽象芸術作品を紹介予定だ。
ポンピドゥー・センターは2009年より、20世紀と21世紀の女性アーティストの作品収集、展示、研究する方針を取っており、現在、女性アーティストの作品は同館コレクションの17パーセント、展示中の作品の30パーセントを占めているという。
また同館は19年から22年にかけて、女性アーティストの大規模な展覧会を行うことで、この取り組みをさらに強化。これまでエリカ・ヴェルズッティ、ドラ・マール、曹斐(ツァオ・フェイ)などの個展を行っており、今後は本展のほか、アリス・ニール、ヒト・シュタイエル、ジョージア・オキーフの回顧展も予定している。
なお本展は、2021年10月22日〜2022年2月27日の会期でスペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館に巡回予定となっている。