世界最大規模の玩具メーカーである「マテル社」と日本の現代アーティストMADSAKIによるコラボレーション展「1984」が、9月11日に東京のKaikai Kiki Galleryでスタートした。
本展では、「マスターズ・オブ・ザ・ユニバース」と呼ばれる、マテル社が開発したおもちゃのシリーズのコミックの表紙や、アクションフィギュアの包装をモチーフにしたMADSAKIの新作絵画と彫刻作品を展示。1984年、MADSAKIが渡米したばかりの頃、アニメ番組「ヒーマン」と「マスターズ・オブ・ザ・ユニバース」シリーズを通して英語を学び、アメリカ文化へ溶け込んもうとした。本展では、そうしたパーソナルなストーリーを見出すことができる。
MADSAKIはこう振り返る。「ヒーマンとマスターズ・オブ・ザ・ユニバースのキャラクターたちは、私にとってずっと特別な存在だった。これらのキャラクターは、自分の周りの世界に向けて自分を表現する方法を探るにあたってとても重要な役割を果たしてくれた。だから、このフランチャイズを使ってこのように自分の人生を表現することは、とても自然なことだ」。
展覧会のタイトルは、権威と体制と個人の自由の相関性が描かれたジョージ・オーウェルの小説『1984』にもつながっている。6歳の時に渡米したMADSAKIにとって、難攻不落の壁は言語であり、その壁を破ってくれたヒーローが「ヒーマン」だった。その人生における真のヒーローと世界観を描きだすために、オーウェルの『1984』を援用したという。
Kaikai Kiki Galleryを主宰する村上隆は、「MADSAKI はアートの世界でも特別な才能を持っている。この数年間、彼の驚異的な成長をKaikai Kikiで身近に感じることができて、とても幸運だった」としながら、今回の新作について次のようにコメントしている。「自身が言語の壁を乗り越える手助けをしてくれたマスターズ・オブ・ザ・ユニバースを通して、コミュニケーションのほつれを解きほどくためにアートをつくるというとても純粋な表現方法で、それは見る人の心に響くだろう」。