異常気象や環境汚染など、人間と環境のつながりやそのあり方が問われる現在。こうした社会的意識の高まりを背景に、植物への関心やフィールドワークから生まれた作品を展覧する「道草展:未知とともに歩む」が、水戸芸術館現代美術ギャラリーで開催される。会期は8月29日~11月8日。
本展では、国内外で活動する6組のアーティストによる約40点を展示。とくに90年代以降に制作された作品を通して、自然との境界に立ち現れる支配構造や歴史の忘却、社会的な不公正など「第二の自然」としての、人間社会における矛盾やねじれに対する批判的な視点も映し出される。
とくに注目したいのは、今年4月に逝去したロイス・ワインバーガーの遺作だ。芸術と自然の議論に大きな影響を与えたワインバーガーは、水戸芸術館の広場のために《ワイルド・エンクロージャー》(2020)を構想。「もっとも良い庭師は、庭を放っておく」という言葉の通り、「植生のシステムにゆだねられた自然発生的なカオスの場」が出現する。
また、フィールドレコーディングによる制作を行ってきた上村洋一は、新作《息吹のなかで》を発表。上村は2019年2月から知床半島の流氷を調査し、その過程で様々な環境音や、いまは聴くことのできない「流氷鳴り」を人間の呼吸や口笛で再現した音などを録音。インスタレーションでは、人間の生と環境、その境界なきエコロジーを体験することができるだろう。
加えて、代表的な連作「自然史」(2011~)、「地名」(1999~2017)を再構成したインスタレーションを展示する露口啓二、人間と植物の関係に香港の地政学的アイデンティティを重ねた映像作品を手がけるロー・ヨクムイ、移住によって生まれる変化やその痕跡、想起される記憶に目を向けるミックスライス、歴史や表象が取りこぼしてきたものから記憶を喚起する空間的な作品を制作するウリエル・オルローが参加。
また本展では、茨城大学地球・地域環境共創機構(GLEC)と連携した「道草資料室」を設置。日々の気づきや身近な環境から、地球規模の問題を考えるオンライン企画などを計画している。