2020.8.1

既存のイメージを問い直す現代の「肖像」とは? 広島市現代美術館の展覧会に注目

展覧会「2020-Ⅱ コレクション・ハイライト+特集『肖像(わたし)』」が、 広島市現代美術館で開催される。本展は、前半を特集展示「肖像(わたし)」、後半を「コレクション・ハイライト」とする2部構成。会期は8月6日~11月29日。

石内都 “Mother's”#39 2002
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 広島市現代美術館が、展覧会「2020-Ⅱ コレクション・ハイライト+特集『肖像(わたし)』」を開催。本展は、前半を特集展示「肖像(わたし)」、後半を「コレクション・ハイライト」とする2部構成で展開される。会期は8月6日~11月29日。

 前半の特集展示「肖像(わたし)」は、現代の「肖像」作品を通して、アイデンティティの揺らぎや、「自己/他者イメージ」の変化をたどることを試みるもの。従来の肖像作品は、ある人の記憶をとどめたり、理想化された自己の姿を投影する役割を担ってきた。しかし現代の肖像作品は、絵画や写真、彫刻、映像など、多彩なメディアと素材で表現されるようになり、それとともに作品に込められた問題意識も多様化している。

 とりわけ近年の肖像写真においては、作品に写し出された「対象」に付与された「既存のイメージ」を問い直す作品が数多く誕生。性別や国籍、外見的な特徴など「見た目」による自己/他者のイメージが揺らぐとき、人々はどのように「私」や「他者」を位置づけることができるだろうか。

 本展では、このような問いを出発点として、様々な視点から「肖像」について再考する。現代を生きる私たちが直面するアイデンティティの不確かさ、そして「肖像」と「私」を取り巻く諸状況について考える機会となる。

 またコレクション・ハイライトでは、「ヒロシマ」を起点に平和を問う作品を紹介。同館は、被爆都市・広島の美術館として、「『ヒロシマ』と現代美術の関連を示す作品」を収集の柱のひとつとしてきた。被爆75周年という節目の年に、「ヒロシマ」をめぐる作家の多様な視点と表現を通して、今日に続く「平和への課題」に美術作家らがどう対峙してきたかをたどる。​

アピチャポン・ウィーラセタクン Teem 2007© Apichatpong Weerasethakul “Teem Nov 21” 2008

​ 「肖像(わたし)」の参加作家は、赤瀬川原平、ハイレッド・センター、福田繁雄、舟越桂、ジュリアン・シュナーベル、チャック・クロース、アレックス・カッツ、秋山祐徳太子、都築響一、諏訪敦、ドゥエン・ハンソン、河原温、アンディ・ウォーホル、石内都、太田三郎、鷹野隆大、森村泰昌、澤田知子、シンディ・シャーマン、池田満寿夫、ディヴィド・ホックニー、駒井哲郎、大木裕之、アピチャッポン・ウィーラセタクン、田中功起。

 コレクション・ハイライトは、ジム・ダイン、宇佐美圭司、浜田知明、殿敷侃、松本旻、尹亨根、アラン・グリーン、靉嘔、金光松美、細江英公、土田ヒロミ、山口勝弘、村上隆、入野忠芳、アンソニー・グリーン、若林奮、工藤哲巳、大岩オスカール、ヤノベケンジ、インゴ・ギュンター、岡本太郎、オノ・ヨーコ、キース・ヘリング、高嶺格、土屋公雄、柳幸典、モナ・ハトゥム、アンジェ・レッチア。

大岩オスカール フラワーガーデン 2004