「炭のアーティスト」リー・ベーの個展、ペロタン東京で開催中

「炭のアーティスト」と称されるリー・ベーの個展「THE SUBLIME CHARCOAL LIGHT - 崇高な炭と光 -」が、六本木のペロタン東京で開催中。会期は8月29日まで。

リー・ベー Issu du feu ch-200 2003 Courtesy of the artist and Perrotin

 30年にわたり炭が持つ多様な側面や性質を探求する作品をつくり続け、「炭のアーティスト」として知られるリー・ベー(李英培)。モノクロマチックな実験的作品によって、ポスト単色画のアーティストとも称される人物だ。

 現在、その個展「THE SUBLIME CHARCOAL LIGHT - 崇高な炭と光 -」が、六本木のペロタン東京で開催されている。本展は、リーにとって、2018年のパリ、19年のニューヨークに続くペロタンでの3回目の個展となる。会期は8月29日まで。

 パリとソウルの2拠点で活動を行うリー。パリのローカルショップで偶然見つけたバーベキュー用の炭が、故郷である韓国・チョンド(清道)の民俗儀礼「タルチッテウギ」(火祭り)を想起させたことから、炭を作品に用いているという。

 タルチッテウギでは、旧暦上最初の満月の夜に「月の家」が拵えられ、人々の願いが煙に乗って空へと届くように火がつけられる。月の家が炭になると、人々はその欠片を持ち帰り、様々な用途に使用する。その炭は神聖なものとして、食べ物に入れれば解毒作用があり、玄関に吊るせば新生児を守るといわれている。リーは、こうした母国の伝統をもとに炭と月光を作品の題材としている。

リー・ベー Brushstroke 2020 Courtesy of the artist and Perrotin
リー・ベー Landscape 2003 Courtesy of the artist and Perrotin

 本展に展示されている《Landscape》では、アクリルメディウムと炭粉を混ぜた黒の塊を縁まで押し出して大胆な余白を表現。炭粉入りのメディウムで円を描き、乾燥後に同じ層を重ねるという工程を繰り返すことで、生み出された作品だ。重層的に描かれる円のモチーフは、凝視すると滲んでいるようにも浮いているようにも見える。余白には、「陰と陽」「物質と現象」の境界の狭間や、記号表現のもとに隠れる記号内容との隔たりを潜ませたという。

 いっぽう《Issu du feu》では、キャンバス上に炭の欠片を密着・結束させ、表面を磨き上げることで、この漆黒の物質が光を反射するように工夫が施された。炭の欠片一つひとつが、まるでゴシック様式のステンドグラスのように異なる光を反射する作品となっている。鑑賞者の目が慣れると、暗順応したときのように作品の繊細なディテールを見出すことができる。崇高でありながら、遊び心ある光との交わりを取り入れたリーの作品に注目だ。

展示風景より Photo by Kei Okano Courtesy Perrotin
展示風景より Photo by Kei Okano Courtesy Perrotin

編集部

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